2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K02035
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
岡崎 英一 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(総合グローバル), 教授 (80233310)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 裁量的行動 / 自己組織化写像 / 固定資産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,東証一部上場企業を対象として,1995年以降の公表財務データにより,研究に必要なデータベースを構築し,それに基づいて自己組織化写像もちいた裁量的行動の検知方法を開発することを目的にしている。 ①令和3年度は,これまでに構築したデータセットに加えて令和3年度に新たに外部より財務データの購入し,東証に登録している企業3,000社に対象を広げて,本研究の分析に必要である経年的な公表財務データに基づくデータベースの構築を行った。 ②令和3年度に構築したデータベースに基づき,本研究の主目的である,対象企業の裁量的行動の有無の把握,その際に選択される会計手続きの特徴,及びその財務的な背景等の特徴等について,自己組織化写像を用いて分析する手法の精緻化等の研究を行った。 ③これまでの研究において,企業規模及び資産規模の異なる場合には裁量的行動を十分に把握できないことが明らかになっていた。また,令和2年度に売上高の規模別にサンプル企業をグルーピングして分析したところ,必ずしも十分な結果がえられなかった。これらを踏まえ,令和3年度では自己資本比率の大きさに着目してサンプル企業をグルーピングして分析したところ,自己資本比率の高い企業においては,本研究の分析手法は必ずしも妥当しないことがあるが,自己資本比率の低い企業においては,本研究の分析手法が適用可能であることを示唆する結果が得られた。 ④また,個々の会計手続きの選択と会計処理間の相互関係から企業の裁量的行動の可能性を検知する研究について,対象企業に対して損益状況と会計選択の状況について自己組織化写像を用いた分析した結果を踏まえて,企業の行動モデルの仮説を検討したとこを,営業損益もしくは経常損益と減損処理及び固定資産の売却処理の選択方法(会計処理の変更を含む)に関して裁量的行動の把握が可能であることを示唆する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで,今後も補充・整理は必要であるものの,概ね研究に必要なデータベースを構築している。それを元に,本研究の目的である自己組織化写像を用いて分析する手法の確立について,これまでの研究で明らかになった課題の解決について研究を進めており,①企業規模及び資産規模の異なる場合には裁量的行動を十分に把握できない点について,研究の結果,自己資本比率で分類することで,対応可能であることを示唆する結果を得ることができている。また②特定の財務状況下での会計処理方法の選択及び各会計処理の相互関係における裁量的行動の可能性の検知の手法の可能性について,現在まで,個々の会計処理について研究を進めており,長期的な営業損益もしくは経常損益(予想を含む)にしたがって,個々の会計処理方法が選択されている可能性があること,及び裁量的行動が選択されている可能性があること示唆する結果を得ることができている。 現在の研究状況を踏まえて,本研究期間全体としては,本研究の目的であるところの,自己組織化写像を用いた裁量的行動の把握の分析ツールを使用可能なものにすること,及びその他の様々な分析においても信頼性のある分析ツールであることを明らするための基礎データを作ること,は可能あると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度で新型コロナのため作成できなかったデータベースについては,令和3年度に2年度分を含めて行うことで,進行を補正することができた。このデータベースを用いて,今後,以下のような研究を進める予定である。 ①自己組織化写像を用いて分析する手法は,自己資本率の低い企業では概ね妥当な結果が得られた。これでこのような企業グループに本研究の分析手法が適用可能である見込がついたが,自己資本比率の高い企業についての適用な方法を分析を行う予定である。また企業比較上のさらなる問題点の把握及び実際の分析事例を詳細に検討することで,この分析手法の実用可能性等についても考察する予定である。 ②令和3年度の結果を踏まえて,今後は,特定の財務状況下における会計処理方法に関して,セグメントごとの中・長期的な損益と減損処理及び固定資産の売却処理,及びその裁量的行動の把握について検討したが十分な結果は得られなかった。今後は,セグメントごとの個々の会計処理に関する企業の行動モデルを再検討し,裁量的行動ついてのより精緻な検知方法を考案する予定である。また,会計処理間の相互関係における企業の裁量的行動の可能性を検知する研究についても研究を進める予定である。 ③以上を通じて,本研究の目的であるところの,公表財務データを用いて,自己組織化写像を用いた裁量的行動の把握の分析ツールを使用可能なものにすること,及び自己組織化写像がその他の様々な分析においても信頼性のある分析ツールであることを明らするための基礎データを作りたいと考えている。また,本年度は,これまでの研究結果についての論文を公表準備中であり,令和4年度中に刊行を予定している。
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Causes of Carryover |
本研究では,公表財務データをもとに,企業の裁量的行動の有無の把握,その際に選択される会計手続きの特徴及びその財務的な背景等の特徴等を,自己組織化写像を用いて分析する手法の開発に関する研究であり,公表財務データをもとに作成するデータセットが研究の基盤であり,公表財務データの入手,入力,補充,整理等を行う研究補助者が不可欠である。この研究補助者は,作成するデータセットの性格上,ある程度会計学の知識を必要とする。本研究では,福井大学で会計学を学ぶ学生等を研究補助者として予定・準備していたが,令和3年度は,新型コロナのため,事前に予定していた財務データの整理を行う学生を研究補助員として雇用ができなかったために,次年度使用が生じたものである。令和3年度に執行できなかった予算は,令和4年度に雇用する予定の研究補助員のために使用し,令和4年度で使用差額を解消する予定である。
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