2022 Fiscal Year Research-status Report
非対称なコスト・ビヘイビアが日本企業のペイアウト政策に与える影響に関する実証研究
Project/Area Number |
20K02041
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
石川 博行 大阪公立大学, 大学院経営学研究科, 教授 (60326246)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ペイアウト政策 / 配当政策 / コスト・ビヘイビア / コスト粘着性 / 収益性シグナリング仮説 / 資源調整コスト仮説 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本企業のコスト粘着性がペイアウト政策とどのような関連性を有しているのかを実証的に解明することである。He et al. (2018) は、コスト粘着性と配当水準の間に統計的に有意なマイナスの関係を発見しているが、石川 (2021) は、プラスの関係を検出している。これらの相異なる結果が、分析対象企業の相違(米国企業vs. 日本企業)に基づくものなのか、推定に用いられた財務情報の相違(四半期情報vs. 年次情報)に基づくものなのか明らかではない。そこで、3年目は、He et al. (2018) と同様、四半期情報を用いてコスト粘着性尺度を推定し、石川 (2021) の頑健性を検証した。 分析の結果、He et al. (2018) と同じく、16四半期の販管費データを用いてコスト粘着性尺度を推定した場合でも、コスト粘着性と配当水準の間に、統計的に有意なプラスの関係が存在するという証拠を得た。He et al. (2018) とは真逆の結果であるが、石川 (2021) の証拠は頑健である。この結果は、日本企業のコスト粘着性に、将来業績に対する経営者の自信という、配当と同様の情報内容が含まれていることを証拠付けている(収益性シグナリング仮説)。コスト粘着性の経年変化に着目した分析も試みている。分析の結果、(分析対象期間が短いという限界はあるが)コスト粘着性の程度が後半期間で高まっており、当該期間で、コスト粘着性と配当水準の間のプラスの関係が強くなっていることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、日本市場の実際のデータを用いて、コスト粘着性とペイアウト政策の関連性を実証分析するものである。本年度は、関連分野の論文のサーベイを行いつつ、日本企業の四半期データを用いて実証分析を行い、その実証結果をまとめたワーキング・ペーパーを内外の研究者に配布し意見交換した。最終年度の分析を行うためのリサーチ・デザインの構築に際して、本年度の研究成果が与える貢献は大きい。以上から、研究活動はおおむね順調であると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目の研究成果に対して、内外の研究者から得たコメントに基づいて、最終年度では、リサーチ・デザインの精緻化を図る。データベースが完成次第、本研究課題の実証分析に取りかかる。
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Causes of Carryover |
(理由)次年度使用額が生じた理由は、世界的な物流情勢等の問題により、2022年11月に発注した物品が、2023年3月末までに納品されるかどうか不透明なため、当該見積額を次年度に繰り越す必要があったためである。この件について、補助事業期間延長承認書を受領している(2023年3月13日)。
(使用計画) 2022年11月に発注した物品が、2023年4月4日に納品されたので、当該物品の支払いに使用する(物品費)。
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