2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K02048
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
櫻井 康弘 専修大学, 商学部, 教授 (80338615)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 会計情報システム / 総勘定元帳システム / 統合化 / 情報技術 / 組織特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
会計情報システムの機能は,狭義には情報利用者の意思決定にとって有用な会計情報を産出し提供することである。会計情報システムにとってのこの要件を充足するためには,情報技術の適用は一つの重要な要素となる。その点で会計情報システムの機能的な要件は,企業が適用する情報技術の水準に依存する技術的な機能性や産出可能な会計情報の範囲などよって決まると考えられる。 今年度は,情報技術の進展やグローバル化などの企業環境の変化が会計情報システム構築にどのような影響を及ぼしているのか,近年における会計情報システム構築の実態を把握するために先行研究の文献レビューを中心に行った。また同時に,本研究の予備的な調査研究として位置づけられる過年度実施した実態調査の結果を分析し,今後計画されている郵送質問票調査の質問項目の設計を行った。 その調査結果の分析では,会計情報システムに高度な情報技術を適用する企業ほど財務会計情報と管理会計情報との産出機能を同時に持たせ,それら会計情報の処理の迅速化をシステム構築目的とする傾向があった。そのような企業では,総勘定元帳システムと業務管理システムとを統合化し部門横断的に情報を活用できるような情報技術の水準と会計情報システムの機能範囲との間に一定の関係が認められた。 情報技術の適用水準は会計情報システムの機能や構造を規定することになるが,加えて企業固有の組織特性要因である経営戦略や行動様式との関係において情報技術が適合的・選択的に適用されるという視点が重要になる。調査結果の分析から情報技術の水準が高い企業ほど,企業環境の変化に対して部門横断的に情報を活用しながら挑戦的かつ柔軟に対応するようなオープンな行動をとる傾向があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では,企業がその独自の組織特性に応じた情報技術を選択し,独自の会計情報システムを構築するという視点から会計情報システムに影響を及ぼす組織特性要因について実態調査を通じて明らかにすることが目的である。 当初計画では,先行研究の文献レビュー,インタビュー調査,過年度実施した予備調査の結果分析を踏まえて,大企業向けの郵送質問票調査の実施を予定していた。 先行研究の文献レビューおよび予備調査の分析はおおむね順調に進展し質問票の設計はおおむね完成に近いところまでできた。 しかし,新型コロナウィルス感染症の世界的な蔓延によってインタビュー調査による予備調査は自粛せざるを得なかったこと,そのような社会情勢を考慮して郵送質問票調査の実施を見送ったこと,さらに,製造業1社との導入研究においても訪問調査を自粛せざるを得なかったことを総合的に評価して,やや遅れいているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症の終息の見通しが立たない状況では,次年度においてもインタビュー調査の実現は難しいことが想定される。 そのため,インタビュー調査による予備的調査は状況を見ながら実施可否を判断することにして大企業に対する質問票調査を次年度実施する予定である。質問票調査は次年度に延期したことにより,質問票設計に当初より時間を多く充てることができ,研究協力者とともに質問票の検討を進め質問票の再設計を現在行って質問項目を最終確認している。次年度早々に質問票調査の準備を整えて秋以降に郵送質問票調査を実施する予定である。 また,製造業1社に対する導入研究も引き続き訪問調査は自粛せざるを得ない状況が続くものと想定される。したがって,すでに当該企業の仕訳データの一部提供を受けているので,その分析を中心に行っていく予定である。 なお,新型コロナウィルス感染症が落ち着いた後に質問票調査の結果をもとにインタビュー調査の実施を考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の影響により,当初計画にあったインタビュー調査および郵送質問票調査を次年度に延期したため,インタビュー調査の旅費,郵送質問票調査の印刷費と郵送費および質問票データ入力のための人件費が未使用となった。 次年度使用額は,延期した大企業向けの質問票調査を秋口早々に実施するために使用予定である。インタビュー調査については実現が難しいことが想定されるので,その場合は質問票調査の対象企業数を当初計画から増やして実施するために使用予定である。
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Research Products
(1 results)