2021 Fiscal Year Research-status Report
Empirical research on relation between reputation cost and tax avoidance.
Project/Area Number |
20K02054
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
松浦 総一 立命館大学, 経営学部, 准教授 (50554317)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 評判コスト / 税負担削減行動 / 実効税率 / CBバリュエーター / 分位点回帰 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,企業の評判(reputation)が税負担削減行動を抑制するかどうか,を検証することである。企業は,評判の価値が毀損するという評判コストと税負担削減行動により生み出される税引後キャッシュ・フローの増分とを比較し,過去に高い評判を蓄積している企業ほど,その毀損コストが高く,結果として税負担削減行動とらないことが予想される。 そこで本研究では,企業の評判の代理変数として伊藤邦雄教授と日本経済新聞社が開発したCBバリュエーターを,税負担削減行動の代理変数として実効税率(effective tax rates)を用いて,実効税率を従属変数とする回帰分析を行った 企業の実効税率を損益計算書上の法人税等を税引後利益で序したものと定義した場合,0を下回る,あるいは1を上回る企業が比較的多く存在し,極端な実効税率に直面している企業を考慮するため,分位点回帰(quantile regression)を用いた分析を行った。 その結果,評判の高い企業ほど,実効税率が高く,高い評判を蓄積している企業ほど,税負担削減行動をとらない傾向にあることが示された。また分位点回帰の結果から,その結果は非常に高い評判を蓄積している企業が積極的な納税を行っているとう結果にあることも示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度に開催された日本会計研究学会第80回大会において特別委員会報告(鈴木一水委員長)の最終報告を行い,そこでCBバリュエーターを用いた税負担削減行動と評判コストの実証研究結果を報告した。 その後,評判コストの代理変数として,企業の不正に着目したデータを用いた実証研究をすすめている。同時に,訂正報告書の開示がもたらす企業の評判についての研究のサーベイも行っており,進捗は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
評判の代理変数であったCBバリュエーターは,公開されていたデータが限定的であり,掲載企業も限られていたため,包括的な分析が行えなかった。そこで,次の研究では,評判を毀損する行動として,企業の不正に注目し,企業の不祥事により評判コストが毀損されたとき,企業がその評判毀損を回復させるために積極的な納税行動を取るか否か,を研究する。 この研究では,企業の不正という定性的な事象を扱うため,企業の評判に強い影響を与える不正を定義し,識別し,その影響を調べた先行研究のサーベイを行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスにより,出張を伴う研究活動が行えなくなり,交通費や学会の参加費が不要となったため次年度に繰越となった。繰り越された金額は,学会出張やデータ収集のための旅費として使用する予定である。
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