2020 Fiscal Year Research-status Report
偏見の顕在化にもとづく排外意識高揚メカニズムの検証
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20K02059
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永吉 希久子 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (50609782)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田辺 俊介 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30451876)
瀧川 裕貴 東北大学, 文学研究科, 准教授 (60456340)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 排外意識 / 偏見 / SNS |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はIAT実験のための準備を進めるとともに、Twitterデータを用いた偏見の顕在化に関する分析を進めた。 IAT実験については、本年度実施予定であったが、実験のためのプログラム作成に関してデータの使用権の所在やプログラムの仕様に関して調整がつかず、翌年に完成予定のプログラムを利用することに決定した。このため、実験自体は実施できなかったが、実験と組み合わせて行う質問紙調査のウェブ調査画面の作成は完了し、実験部分についても用いる刺激の選定、試行回数などについては既に決定している。これをもとに現在実験プログラムを作成中であり、2021年度に実施するための準備は整っている。 Twitterデータを用いた偏見の顕在化については、2013年に取得したデータを用い、Twitter上のコミュニティ内/コミュニティ間での意見の拡散状況の把握と、意見の拡散が生じる要因の検証を行った。データの分析の結果、右派コミュニティ、左派コミュニティなど政治的に明確な立場をとるコミュニティの意見は、他のコミュニティと比べ、コミュニティ内での拡散にとどまる傾向にあること、コミュニティ外への意見の拡散に、従来の研究で指摘されてきたアカウントの影響力やハッシュタグの使用は影響しないことなどが示された。ここから(排外的なものも含む)右派コミュニティの意見の拡散を促す要因として、アカウントの影響力よりもツイートそのものの内容が重要であるとの仮説が立てられる。この内容は、2021年に開催される国際学会で報告予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
IAT実験については2020年度中に実施予定であったが、実験部分から質問紙部分へと調査対象者がスムーズに移行するための方法の決定や、実験から得られたデータの使用権についてなどの面で調整が遅れ、プログラムの完成に至らなかった。しかし、すでにこれらの調整は終わり、2021年度夏には実験を開始できる状況となっている。また、実験と組み合わせて行う質問紙調査のウェブ調査画面の作成は完了し、実験部分についても用いる刺激の選定、試行回数などについては既に決定している。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度はIAT実験を実施し、そのデータの分析をもとに、日本社会に韓国人や中国人にたいする潜在的な偏見がどの程度存在するのか、顕在的な偏見との間でどの程度の乖離があるのか、またその程度に世代などの社会的属性による差があるのかを検証する。分析結果は国内外の学会で報告の上、論文にまとめる。 Twitterデータを用いた分析については、5月開催予定の国際学会で発表のうえ、論文にまとめ投稿予定である。また、ツイートの内容にトピックモデルを用いた分析を行い、トピックによってコミュニティ外への拡散の程度に差があるのかを分析する。この結果をまとめ、国内外の学会で報告の上、論文にまとめる予定である。 Twitterデータの分析から明らかになったツイートの拡散要因を、IAT実験に組み込み、そうした条件が整った場合に、潜在的な偏見を顕在化させるのかを検証する。
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Causes of Carryover |
前述のように、本年度実施予定であったIAT実験が実施できなかったほか、学会がオンライン開催となったため、報告のための旅費も発生しなかった。実験予算については2021年度に実施する際に使用する。また、本年度も学会がオンライン開催であることが予想されるため、旅費として計上していた予算を調査の対象者数を増やし、より頑健な結果を得るために使用することを検討している。
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