2021 Fiscal Year Research-status Report
在日米軍基地の労働実態-職務範囲と労働規制の視点から
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20K02061
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
伊原 亮司 岐阜大学, 地域科学部, 准教授 (60377695)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 在日米軍基地 / 全駐労 / 職務給 / ジョブ型 |
Outline of Annual Research Achievements |
在日米軍基地では、労働者は国(防衛省)と雇用契約を結び、国から給与を支払われる。国は米軍と労務提供契約を結び、米軍が必要とする労働力を供与する。労働者は、米軍の指揮のもと、労務を遂行する。つまり、雇用主の国と労働者の間に使用者の米軍が介在する間接雇用方式である。 基地労働者は、国に雇われているものの、国家公務員ではない。ただし、1963年に、日米両国と在日米軍基地の労働組合との間で、給与体系は国家公務員に準じることが合意に達した。労働組合は、国際関係に翻弄され、米軍や国に対して交渉、対立、揺さぶり、対話を続け、国家公務員に準ずる立場をどうにか確保し、現在に至る。 在日米軍基地の労務管理として特筆すべき点は、職務給制度である。基地の職種は1300あまりあり、現在900ほどが使用されている。職務記述書(定義書)には、職種名と番号が割り振られ、職務と責任が定義されている。職務ごとに「等級(1~10)」が定められ、職種が変わらない限り、原則、等級は変わらない。基本給額は各等級の「号俸」で決まる。採用時は原則、最低号俸から始まり、1月1日の定期昇給であがる。学歴の考慮は限定的である。査定も、プラス査定以外、存在しない。等級(に対応する基本給)を上げたければ、空きがでた職に自ら応募する。 人事院の給与勧告により、国家公務員の号俸額の見直しがあり、それに準じて駐留軍従業員の給与改定が閣議決定・国会承認された年は、号俸額が改定される。職務(職務記述書、基本給表、等級)を変更したり新たに設定したりする場合には、基本的に日米双方の合意が必要である。実際上の手続きとして、米軍側の提案に対して組合は事前に照会を受け、意見を述べる機会を与えられている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍になって、基地に赴くことは難しいが、基地の労働者と頻繁にコンタクトをとり、職務給にかんする資料・史料をもらっている。
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Strategy for Future Research Activity |
職務給制度の確立に至る経緯を、基地の労働組合の本部を中心とした運動から明らかにしてきたが、今後は、各基地における労働者の動きに注目する。
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Causes of Carryover |
横須賀や沖縄などの基地に実際に行こうと思ったが、コロナ禍により、不可能になったため。ただし、研究自体は進めており、労働者に聞き取りや資料の提供をお願いした。
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