2020 Fiscal Year Research-status Report
日本の未実現核燃料サイクル施設立地計画と地域抵抗運動成功例についての実証研究
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20K02065
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
樫本 喜一 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 客員研究員 (10598965)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 原子力政策 / 核燃料サイクル政策 / 核拡散問題 / 科学技術史 / 日本近現代史 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は研究課題に関係する原子力技術開発分野の文献調査を主に実施し、その成果を論考にまとめて発表した。関係する分野とは、具体的にいうと1970年代前半、国際的な巨大プロジェクトとして存在していたクラ運河計画についてである。クラ運河計画とは、マレー半島が最も狭まったタイ国内の地峡部に運河を開削する巨大土木工事計画であり、特殊な水爆(核融合爆弾)を利用するPNEs(平和的核爆発)工法を用いる予定であった。プロジェクトの実施主体である国際コンソーシアムの会合が東京で開催され、この東京会合でPNEs工法の適用が最終決定されたと言われるが、その場に各省の官僚も出席していたため、日本政府の関与が強く疑われた。また当時、日本において核燃料サイクル関連施設の立地調査を実施していた組織である日本工業立地センターの関係者も会合に参加していたため、日本の核燃料サイクル政策との人脈的関連も濃厚であった点が判明した。このプロジェクトも未実現に終わったが、日本が米国の機微核技術(核燃料サイクル関連技術を含む)にアクセスしていたルートについて、部分的ではあるものの解明する手がかりを得た。時期的には、米国の機微核技術移転の見直しが開始される直前に発生した事例であるが、本来、この類の情報は表面化する例がなく、非常に貴重な情報であるといえる。今後の調査・研究に関連する新たな視点を獲得したという点でも、研究成果上の進展といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究初年度に同時発生した新型コロナウイルス感染拡大が大きく影響し、出張を伴う調査全般が滞ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの感染拡大が収まるかどうかの状況次第ではあるが、出張を伴う調査が可能になれば、遅れを挽回するべくスケジュールを工夫する予定である。また、出張を伴わない文献調査などで代替できる部分があれば、それを最大限利用する。
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Causes of Carryover |
研究期間開始と同時に発生した新型コロナウイルス感染拡大の状況により、緊急事態宣言が発令されるなどして、県境をまたぐ出張を伴う調査が実質的に不可能となったため、主要な支出となる旅費が発生しなかったことによる。
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Research Products
(1 results)