2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K02066
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
深谷 裕 北九州市立大学, 地域戦略研究所, 教授 (60435732)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲月 正 北九州市立大学, 基盤教育センター, 教授 (30223225)
坂本 毅啓 北九州市立大学, 基盤教育センター, 准教授 (30353048)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 出所者 / 対話 / 当事者 / 包摂型地域 / インフォーマル / 犯罪 / 刑務所 / 伴走型 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、刑務所出所者(以下、出所者)の地域生活の継続を可能にする包摂型地域の具体的態様と、そのような地域社会をつくりあげていく条件と方法、および包摂型地域の形成を阻む要因についてインフォーマル支援を鍵に実証的に明らかにすることであった。 2020年度~2023年度にかけて、当事者14名に対しインタビュー調査を実施した。その結果、女性の場合は子どもからの働きかけが功を奏していることや、職場の上司・同僚、類似の課題を抱えつつも先に回復しているモデル的人物、伴走者等の存在が回復の鍵として浮かび上がった。インフォーマルなつながりとしては、自立支援ホームなどの近隣にある店舗等とのつながりが見いだされた。 また、2022年度までに実施した支援者4名からの聞き取り調査では、公的支援や制度の利用がメインにはなっていたものの、職員が施設近隣の地域住民と積極的に交流を図り、施設利用者(出所者)との距離を縮められよう日々努力を重ねていることが明らかになった。ただ、出所者が独居の場合や満期出所で支援につながっていない場合は、支援者が主体となった近隣地域への働きかけは難しく、限界があることが明らかになった。 さらに、刑務所内での対話的取り組みに関するドキュメンタリー映画を3回上映し、その前後の参加者の出所者に対する認識変化を考察した。その結果、回答者の年齢や、接触経験、罪種等により認識変化に違いがあることが明らかになった。 2023年度は、イギリス、カナダ、デンマークの出所者支援について訪問調査を行った。いずれの国も出所者支援については同様の課題を共有していた。ただ、当事者もまた自らの経験を社会に役立てたいと、非当事者と共に積極的に就労支援や生活支援に加わっていたことが日本との相違として見出された。このような活動が出所者が安心できる居場所の一つとなっていた。
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