2020 Fiscal Year Research-status Report
戦後復興期労働運動の再評価: 夕張炭鉱労組書記長日記(1947-62)翻刻と分析
Project/Area Number |
20K02067
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Research Institution | Sapporo Gakuin University |
Principal Investigator |
大國 充彦 札幌学院大学, 経済学部, 教授 (40265046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉野 和志 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (00197568)
西城戸 誠 法政大学, 人間環境学部, 教授 (00333584)
新藤 慶 群馬大学, 教育学部, 准教授 (80455047)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本の労働運動 / 炭鉱労働組合 / 生活史研究 / もうひとつの可能性 |
Outline of Annual Research Achievements |
笠嶋一氏から寄贈された資料の整理を進めている。当該年度では、1947~62年の自筆の日記を中心に文字起こしをして、解読する作業を開始した。1948年に地元の秋田から北海道夕張に移動し、1950年代半ばに労働組合の幹部となるまでの期間は、ほぼ毎日、日記が綴られている。幹部となって以降は、日記の記述が簡素になる。幹部になるまでの期間にまずは着目して、労働運動に関心を持ちながらも、スポーツや文化活動にも関心を持ち、毎日を綴っている様子を解読することとした。 この時期を、青年・笠嶋氏の成長過程として捉え、日記自体に解説を加えて資料的な価値を生み出す方向で研究を進めることとした。日記の原文を活かしながら、研究者による注釈や解説を適宜加えたものを考えている。この日記を補完する資料としては、後年、自ら執筆しようと試みた『自伝』の手書き原稿がある。また、新夕張炭鉱労働組合の解散記念誌も資料として参照することができる。 自筆の日記、手書き原稿などは、判読困難な文字もあるが、文字起こししたファイルと、自筆原稿をスキャンしたPDFファイルを研究組織で共有して、解読作業を進めることとした。 作業を始めたばかりの段階なので、内容の詳細な検討は今後の課題となる。日記の読んだ印象に過ぎないかもしれないが、1950年前後の日本の労働運動のありように対して、渦中にいた当事者の目線は特有のものがあるように思われる。そのような印象を掘り下げていき、日本の労働運動のもうひとつの可能性をうかがわせることができる資料となるかどうか、作業と考察を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実施計画」に記載した3つのプロセスのうち、初年度において第1の資料整理におおよその目処がついたことが上げられる。とりわけ、自筆日記に関してはほとんどの文字起こしは終了し、自伝についても同様の状況にある。第2の、日記やメモのデータに基づいた笠嶋氏の生活史記録の作成については、注釈つきの日記を作成するという具体的な方針が確定して、作業を始めている。注釈つき日記のために必要な資料についても、笠嶋氏から寄贈された資料を探りながら、必要なものをPDFファイル化する作業を進めている。第3の点については、注釈つき日記がおおよそ完成した段階で、最終年度に考察することになる。注釈つき日記は、二年目には完成させたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、注釈つき日記を作成する作業を進め、できれば年度内に完成させたいと考えている。そのために、解読作業、注釈を付し、解説を加える作業を進める。適宜、研究組織メンバーで意見交換を行って、分担しながら進めている作業のポイントを共有していく。 日記の作業と並行しながら、日本の労働組合運動のもうひとつの可能性をどのように日記から読み取るのかを、3年目の研究に向けて検討し始める方針である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染状況が悪化したことによって、江別市の札幌学院大学に研究分担者が出張し、日記や資料の現物を直接確認するための旅費の執行ができなくなったケースがあった。使用計画は当初予定の他、注釈つき日記を出版する可能性も視野に入れて、そのための経費とすることを予定する。
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