2020 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the Normality Bias of Vulnerable People by Social Capital and its application to Evacuation Behavior
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20K02068
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
北川 慶子 聖徳大学, 心理・福祉学部, 教授 (00128977)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大串 浩一郎 佐賀大学, 理工学部, 教授 (00185232)
日野 剛徳 佐賀大学, 理工学部, 教授 (20295033)
田原 美香 東京家政大学, 健康科学部, 准教授 (30638268)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 正常性のバイアス / 福祉避難所 / 避難経路 / ソーシャルキャピタル / 避難時要配慮者 / 障害者の自立避難 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の自然災害の傾向として「複合化・大規模化・広域化」とその様態が変化してきているにもかかわらず、「これまでの経験」、「経験による知見」が「正常性のバイアス」となり、多くの被災者・犠牲者を出してきている。 したがって、避難時要配慮者の早期避難が実現すれば被災・犠牲者の最小化を図ることができるということが本研究の問いである。 「誰一人も取り残さない」生命を守るための早期避難となれば、高齢者・障害者に対する支援者を削減することが可能になる。 そこで、これらの人々および日常の介護や生活支援者に対し、災害時の「避難の正常性バイアス」をソーシャルキャピタルの3指標によって分析・評価することを試みた。低平地域において、高齢者・障害者による早期避難のための複数避難路の実証実験を実施し、避難5要素と5段階警戒レベルにより早期避難の判断・避難路の適切性を検討するということを令和2年度の研究計画として実施の予定であった。 令和2年度は、フィールドワーク研究の進行をコロナの感染拡大に影響を少なからず受けた。理論的研究と最小限のフィールドワーク、インタビュー調査および障害者施設の立地調査等は、実施できたが、質問紙調査は実施はできなかった。対面調査22障害者施設毎の早期避難計画は、BCPの作成如何であった。 早期避難は、施設の立地条件調査により立地と避難に関する情報の入手状況に規定されることがあることも実証できた。 障害別及びその程度別の避難情報が必要であることも明確化した。 これらの課題は紛れもなく、障害者に対する「正常性のバイアス」に起因するという、これまでの調査にはない新たな課題を抽出することができた。 避難には、職員・地域住民への信頼性・互酬性・規範・ネットワークという最低限のソーシャルキャピタルがいかにバランスよく築かれているかを捉えることの重要性が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進捗状況としては、当初計画から高齢者施設の調査のみがやや遅れている。 その最大の理由は、コロナウィルス・パンデミックにより、施設側から来園を遮断しているため、調査の中止要請があったこと、コロナ対応の煩雑時の職員との打ち合わせへの中止要請の依頼があったためである。 調査対象とする高齢者施設については上記の理由により、オンラインでインタビュー調査の一部を行ったものの、職員は、入所高齢者の対応に追われ、短時間のインタビュー調査しかできなかった。 アンケート調査票は事前に用意できたものの、その基礎調査のインタビュー調査が当初予定数より少なく、時間も短時間に終わった。 しかし、障害者については、身体障害者に対する在宅者への個別訪問は可能であり、また障害者入所・通所施設への訪問が2度にわたって可能であったため、インタビュー調査、現地踏査が進展した。 したがって、研究計画としては、平時を想定した計画であったため、全てが計画通りには実施できていないものの、それは高齢者施設に対する限定的なものであった。 ただし、その分を障害者施設のインタビュー調査および施設立地条件踏査に充当したために、避難時の正常性のバイアスおよびソーシャルキャピタルの重要性の質的調査が進展し、十分な調査成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の研究計画は、現地調査(踏査)・アンケート調査が中心となるが、感染症の続行に特に配慮をした研究計画とする。特に、人を対象とする、特に健康上・行動上の制約を有する人々を対象とす研究であるため、調査対象者及び研究者の、コロナウィルスの感染に留意をし、環境調査とインタビュー調査を人・場所を区分して実施する。 入所施設の職員等に対しては、オンラインによるインタビュー調査・相談会を開催等、オンラインを利用した調査に切り替える予定である。 コロナ感染者の拡散が収束しない限り高齢者施設への訪問調査は実施できない。したがって、令和3年度は在宅及び施設入所障害者及び職員を対象とした調査を重点的に行うこととする。ただし、オンライン調査は可能であるため、これに取り組む。コロナ感染緊急事態宣言が解除され、就職していけば、比較的感染者数の少ない地域の30か所程度の障害者施設への現地対面調査は可能となることが予測されるため、十分本研究の所期の目的は果たされると考えている。 コロナウィルス・パンデミックは、研究上にダメージを与える負の影響も与える一方で、新たな積極的な影響も本研究に与えている。それは、2021年6月に、2度にわたり、アメリカのFEMA(危機管理庁)とのオンライン会議等で日米の障害者に対する防災・災害対応・復旧復興・減災までの情報を共有することを予定している。本年度中にFEMAとのオンライン会議を複数回予定している。 アメリカ危機管理庁との交流によって、国外の高齢者・障害者の危機管理としてのソーシャルキャピタル論議ができ、双方にとって新たな知見も予想される。 高齢者施設への調査研究訪問の可能性は現在のところ低いため、令和4年度に実施ということも想定しておく必要があると考えている。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス・パンデミックが、アンケート調査およびインタビュー調査を予定していた高齢者施設等からの要請により、訪問中止、それぞれの調査を実施することができなかった。したがって、物品費、人件費及び謝金、交通費に余剰金が発生した。 さらに、分担研究者との対面でのミーティングも予定していたが、オンライン会議としたためにその費用も不要になった。コロナ感染者の拡大が調査の当初計画の変更を余儀なくさせ、部分的に研究の進展を阻み、当該助成金の使用に余剰金が出た最大の理由である。なおこの余剰金は、次年度の現地調査の旅費に充当するものとする。
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