2021 Fiscal Year Research-status Report
Vulnerability of the home care workers under the marketization of care for the elderly and resolution of it
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20K02071
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
山根 純佳 実践女子大学, 人間社会学部, 准教授 (80581636)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 介護保険制度 / 新型コロナ・ウイルス / 訪問介護 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,公的介護保険制度の下で訪問介護事業所と労働者が直面する脆弱性を,介護報酬という資源の限定性と,市場化による顧客主義という2つの要因から考察することにある.先行研究にもとづけば、「ケア」がどのように提供されるかは,「認知されたニーズ」,ケアする側とされる側の「相互行為」,ケアを供給するための「資源」,ケアをめぐる「規範・理念」の4つの要因によって規定されている。新型コロナウイルスの感染拡大は,「認知されたニーズ」を増大させ感染に関する情報収集,感染リスクの拡大への対応など付加的な労働を増加させた,こうした現場でのニーズの増大に対し、資源や自治体からの情報は限定されていた.訪問介護労働者は、感染リスクにさらされながらも、「資源の枯渇」状況の中でもっとも脆弱な立場に置かれてきたといえる。こうした状況について、山根純佳,「介護保険制度とジェンダー―ケアの市場化の功罪」(令和3年9月10日フォーラム 労働・社会政策・ジェンダー主催「ケア労働とジェンダー」連続講演会)にて報告した。 上記の「資源」が、ケアワーカーの相互行為に与える影響について、山根純佳2021「ケアワークにおけるジェンダーの再編」(『社会学評論』288号)では、施設介護における労働者の不足の下で長時間労働を専門職の要件とみなす形で「熟練」の定義が変容し、「男性」が理想的な労働者として評価されていくプロセスについて考察した。そのほか、訪問介護労働者が起こしている訴訟において意見書提出を行った(東京地方裁判所令和元年(ワ)第29483号損害賠償請求事件(原告 藤原路加外2名 被告 国)。 一方、本研究で予定した郵送調査は、感染の拡大による事業所の繁忙から2021年度の実施は見送り、2022年度に実施することにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は訪問介護事業所とそこで働く労働者を対象にした質問紙調査を実施する予定であった.しかし周知のとおり,2021年度も新型コロナ・ウイルスの感染拡大は収まらず,なかでも地域の高齢者介護を担う訪問介護事業所は,人手不足のなかでのサービス供給,感染防止や利用者の感染にかかわる情報の収集,感染した高齢者への介護サービスの維持など多大な貢献を求められている。こうした状況から感染拡大期における郵送調査は回収率が低くなると考え、質問紙調査は,2021年度は見送り2022年度に延期することにした.一方2022年度調査では、新型コロナウイルス感染拡大が事業に与えた影響についても調査することが可能になった。当初予定していた調査項目に加え、事業所調査ではコロナ禍の経営の状況、運営をめぐる課題や自治体との関係、労働者調査では、感染拡大時期のサービス提供が与える心理的影響についても、質問項目として組み込むことを予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染拡大により延期していた、訪問介護事業所に対する郵送紙調査,訪問介護労働者に対する郵送調査+web調査を実施する予定で準備をすすめている.2020年の感染拡大から2年間、夏前は比較的に感染状況が改善していることからは、6月下旬をめどに調査票を配布する予定である。事業所規模や法人格によって、リスクの高い利用者へのケアを提供する傾向が異なるかどうか、どのような事業所でより「顧客主義」的なサービス提供を展開しているかを分析する。 ・調査サンプリング方法は厚生労働省「介護サービス情報の公表システムデータのオープンデータ」https://www.mhlw.go.jp/stf/kaigo-kouhyou_opendata.html「110訪問介護」から、ランダム・サンプリングをおこない,選定された5000事業所に調査を依頼する。 ・配布方法:郵送調査法を用いる.郵送により調査票を配布、実践女子大学宛ての郵送での回収を依頼する.調査票は、事業所調査1部を管理者、労働者調査2部を訪問介護員(正規・非正規)に記入してもらう。労働者調査には、同じ内容のオンライン調査のQRコードも付記し、Web上で個人的に回答できる選択肢を用意しておく(事業所票の回答と労働者票の回答は紐付けしない)。7月中旬までに回収し、8月以降分析を行い、随時学会等での報告を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2021年度は新型コロナ・ウイルス感染拡大の収束が見通せず、郵送調査の実施を見送った。2022年度は上半期に5000ケースの郵送調査を実施する。郵送代(発送代+着払い)に120万円程度、封筒/調査票印刷代に50万円、データの整理等に80万円程度使用する予定である。
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