2021 Fiscal Year Research-status Report
多元的アプローチに基づく都市の公共空間における自由の規定要因
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20K02083
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
堂免 隆浩 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (80397059)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 多元的アプローチ / 都市 / 公共空間 / 自由 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、学術的問いとして「なぜ本来自由であるべき都市の公共空間において地方自治体が自由を制限するのか?」を解明することを目的とする。そして、都市の公共空間の典型として公園に着目する。 令和3年度は、令和2年度の計画1)、2)に続いて、3)個別自治体への面接調査を実施する予定であった。しかし、コロナウィルス感染症の影響で調査の実施が困難となった。これに対し、先行研究を調べる中で、公共空間におけるルールは地方よりも都市部において作成される傾向があることが分かった。そこで代替措置として、東京都内の全62市区町村を対象とし、各自治体のHPを調査し、ルールの策定状況を確認することとした。 調査の結果、東京都内の市区町村の全62自治体において649ルールを確認できた。これらのルールにおいて、「制限される行為」が30個、「禁止される行為」が65個も確認できた。さらに、ルールには行為に対する制限および禁止だけでなく、「容認される行為(12個)」、「努力義務・責任が求められる行為(9個)」「推奨される行為(15個)」の存在を確認した。 公共空間における「自由」に関して、行為に対する制限や禁止はまさしく自由の範囲を狭めることになる。これに対し、容認、努力義務・責任、推奨は必ずしも自由の範囲を狭める訳ではなさそうに思われる。しかし、ある行為に対する容認はこれ以外の行為が制限されることを含んでおり、ある行為に対する努力義務・責任あるいは推奨はこれ以外の行為を選択させない傾向を含んでいると考えられる。そのため、「自由の制限」を公共空間に応用する場合は、制限や禁止だけでなく容認、努力義務・責任、そして、推奨までを含ませた「自由のコントロール」の考え方が重要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、3)個別自治体への面接調査を実施する予定であった。面接調査では、全国の各地方より2つの自治体を無作為抽出し調査対象とする予定であった。しかし、コロナウィルス感染症の影響で調査の実施が困難となった。これに対し、先行研究を調べる中で、公共空間におけるルールは地方よりも都市部において作成される傾向があることが分かった。そこで代替措置として、東京都内の全62市区町村を対象とし、各自治体のHPを調査し、ルールの策定状況を確認することとした。 東京都内の全62市区町村を対象として調査を行うことができたことから、当初予定していた自治体数(12自治体)よりも多くの自治体について公共空間における自由の制限の実態を確認することができ、研究の進捗が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、4)仮説検討、および、5)全国自治体への質問紙調査、を行うことを計画している。 4)仮説検討では、令和3年度に実施した、東京都内の全62市区町村における公共空間のルール策定状況の確認を踏まえ、都市の公共空間において地方自治体が自由を制限する理由について仮説を検討する。当初、「自由の制限」は行為に対する「制限」「禁止」のみに焦点を当てることで充分であると考えていたが、令和3年度の作業より、行為に対する「容認」「努力義務・責任」「推奨」についても焦点を当てることが望ましいことが分かった。そこで、この点も踏まえ、仮説検討を行うことが必要となる。 5)全国自治体への質問紙調査では、全国の1,724市区町村から1,000件を無作為抽出し、公園管理関連の部課宛に質問紙を郵送で発送回収する。回答への協力依頼を電話で最低2回行う。質問紙の発送回収およびデータ入力では大学院生2名の補助を得る予定である。
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Causes of Carryover |
令和3年度は、個別自治体への面接調査を実施する計画であった。面接調査では、全国の各地方より2つの自治体を無作為抽出し調査対象とする予定であった。しかし、コロナウィルス感染症の影響で調査の実施が困難となった。そのため、当初予定していた国内旅費分の経費を令和4年度に繰り越すこととした。 繰り越し分は、当初予定していた自治体への面接調査における旅費として使用することを計画している。
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