2020 Fiscal Year Research-status Report
Comparative Study on Politics of Deinstitutionalization and Families of Persons with Disabilities
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20K02084
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
高橋 涼子 金沢大学, 人間科学系, 教授 (80262541)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 障害者 / 脱施設 / 家族 / 地域社会 / 排除 / 孤立 / 包摂 / 支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究開始年度にあたり、国際比較に向けた準備として、脱施設化の進行の程度・段階と代表的地域を、①脱施設化の完了もしくは完了間近な国として北欧(スウェーデン・デンマーク・フィンランド)、②脱施設化の途上(施設ケアの併存する)国・地域として台湾、③脱施設化以前の国としてベトナム、の3つに分類し、それぞれの障害者政策の動向に関して、ウェブ上で各国の文献や資料を収集した。計画していた障害者施設や家族に関する海外現地調査は新型コロナ感染状況のため行えなかったが、研究協力者とメールで連絡を取り次年度の研究交流準備を行った。 日本の障害者政策に関しては、まず、津久井やまゆり園事件以降の神奈川県の動向の情報収集を行った。入所していた障害のある人々への対応が進行する一方で、園を運営していた法人の運営内容に関する問題点が指摘され、改めて閉鎖的環境となりやすい入所型施設の課題と施設に頼らざるをえない家族の問題を確認した。また北陸地域で発生した、病死した父親の年金不正受給事件をめぐって、当該事件の被告に軽度の知的障害があることが明らかとなり調査したところ、長年、福祉支援を受けておらず地域社会では孤立状況にあったことがわかった。以上のことから、日本の地域社会における障害のある人の包摂と家族、入所型施設の関連に焦点をあてた検討の必要性を強く感じ、第94回日本社会学会大会に向けてテーマセッション「家族からの排除/家族への排除:入所型施設と脱施設化の課題」の企画をコーディネーターとして応募した結果、採用され発表者の募集が開始された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナ感染状況により、研究対象国として予定していた国での障害者政策に関する海外調査は実施できなかったが、脱施設化の諸段階にある各国・地域の情報収集に関しては、ウェブ上で行い、自動翻訳ソフトを使用して内容の理解と検討を進めることで、ある程度、進捗させることができた。日本の障害者政策に関しては、障害のある人を始めとして様々な支援ニーズをもつ当事者のケアを家族に依存する傾向が依然として強い日本において、入所型施設ケアをめぐる障害のある人、障害のある人の家族、それぞれの葛藤から、脱施設化と地域社会の課題、ケアと家族の社会的位置づけといった政策の方向性まで幅広く検討するテーマセッション「家族からの排除/家族への排除:入所型施設と脱施設化の課題」を第94回日本社会学会大会に向けて企画することによって、課題検討のためのプラットフォーム構築を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き海外各国の文献や現地情報をウェブからより広範に収集し、自動翻訳ソフトを活用して翻訳することで資料調査を進める。またオンラインでのインタビューや研究連携を進めるとともに、新型コロナ感染状況が改善した場合の現地調査実施に向けた準備を整える。日本に関しては、テーマセッション「家族からの排除/家族への排除:入所型施設と脱施設化の課題」の運営を行いながら、障害者政策の課題検討を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染状況により予定していた海外調査が実施できなかったため、旅費および現地での通訳の謝金として計画していたものが実施できなかった。ウェブ上での資料収集を強化するため、自動翻訳ソフトの更新を行うとともに、各言語の資料の自動翻訳部分に関して校正を行い整理するため、国内外の専門家への協力依頼とそのための謝金支出を行う。また、研究計画上の海外調査の順番にこだわらず、新型コロナ感染状況の改善によって海外渡航の制限が緩和される地域から順次、調査できるよう、各地の研究協力者と連絡をとりあって備える。
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Remarks |
北陸地域で2020年12月に発覚した、病死した父親の年金不正受給をめぐる事件で、被告には軽い知的障害があることが明らかになり、障害のある人の社会的支援と処遇について、2021年3月の被告の初公判に合わせて研究者としてメディアから取材を受けコメントを述べて掲載された(2021年3月3日北陸中日新聞27面)。
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