2020 Fiscal Year Research-status Report
Reconstructon of the theory about consumer society and reformulation of ethical consumption
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20K02085
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
畑山 要介 豊橋技術科学大学, 総合教育院, 講師 (70706655)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 努 北海道大学, 経済学研究院, 教授 (40281779)
丸山 千賀子 金城学院大学, 生活環境学部, 教授 (20324965)
根本 志保子 日本大学, 経済学部, 教授 (70385988)
伊藤 賢一 群馬大学, 社会情報学部, 教授 (80293497)
神野 由紀 関東学院大学, 人間共生学部, 教授 (80350560)
生垣 琴絵 沖縄国際大学, 経済学部, 准教授 (90646093)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 消費社会 / 倫理的消費 / 経済思想 / 消費者運動 / ハンドメイド / 持続可能性 / 無印良品 / 物質主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、物質性の哲学の展開を社会学に導入することで消費社会論を理論的に刷新し、記号理論とは異なる仕方で「モノの倫理的消費」を再評価することである。今年度は、当初の研究計画よりも多くの6回の消費社会論研究会と2回の合評会を開催し、(1)「脳を拡張する機能としてのモノの意義に関する研究」と(2)「モノの消費行動における倫理性の再評価に関する研究」の2つのユニット研究を推進した。 (1)脳を拡張する機能としてのモノの意義に関する研究:人間と物質の関係をめぐる現代的理論として、アクターネットワーク理論や新しい実在論などを取り入れるとともに、消費理論におけるその有効性について検討した。こうした基礎的な検討を重ねるとともに、その一方でハンドメイドや無印良品といった経験的な対象を分析し、現代社会における物質の消費のあり方を考察した。また物質がもたらす消費の快楽性についての考察も展開し、この快楽性が倫理的消費につながっているという見方を提示した。 (2)「モノの消費行動における倫理性の再評価に関する研究」:ケイト・ソパーやダニエル・ミラーの消費論の分析を通じて、消費の倫理性をめぐる先端的な理論を検討した。またそこから、顔の見える産消関係や消費者運動の意義を捉え返し、今日におけるそれらのあり方について考察を展開した。また外部の研究者を招き、実践理論の観点から持続可能な消費について検討した。 以上の考察・分析をもとに、研究会内で出版ワーキング・グループを編成して出版に向けた原稿執筆をおこなった。これらの成果については、次年度において出版が予定されている。なお、代表者は本年度の『経済社会学会年報』に本研究に関する研究成果の一部を既に査読論文の形で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はコロナ感染拡大防止のため対面での研究会等の開催ができなかったが、遠隔会議システムを通じて予定よりも多く6回の研究会を開催し、また外部招聘研究者も含めた2回の合評会を実施することができた。研究会では代表者・分担者・協力者の研究成果について報告がなされ、全体での詳細な検討がおこなわれた。さらに、各自の分担研究に加え、物質主義の哲学などについても情報を共有するとともに、消費研究における応用可能性が議論された。こうした検討や議論の成果については研究会内で出版ワーキンググループを編成して執筆を進め、次年度に編著『ロスト欲望社会』(勁草書房)において公表することが決定している。 さらに外部研究者を招きにオープンな形式で開催した第1回合評会(10月開催)では社会的実践理論の観点から持続可能な消費について検討・ディスカッションをおこなった。第2回合評会(11月開催)では経済人類学の最新の成果とその可能性を検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においては、これまでの研究成果の発表と新たな理論的な検討、そして経験的対象の掘り下げをおこなっていく。 研究成果の発表に関しては上述の『ロスト欲望社会』の出版が決定しており、これをプラットフォームとしながら専門家を中心としつつも一般市民に対しても広く研究成果を公開していく。また、10月に開催予定の経済社会学会全国大会において、ラウンドテーブル・セッション「ロスト近代の消費文化:道徳と倫理・無印良品・ミニマリズム」を申し込んでおり、研究分担者を中心に経済社会学の専門家と議論を取り交わしていくことを予定している。また、研究成果を海外査読雑誌で随時発表していくことも計画しており、ワーキンググループを形成してその準備を進めていく。 新たな理論的検討に関しては、M.ガブリエルの「新しい実在論」を消費論に応用する可能性について検討していく。消費社会論では80年代のボードリヤールの記号消費論が批判されてきたものの、しかしその根底にある構築主義的実在観はいまだ根強く残っており、記号体系に強制された虚構として消費社会を捉える見方が広く浸透している。「新しい実在論」の検討を通して「意味の場」という観点から、現代社会の消費を捉える基礎理論を再構築していくことを目指していく。 以上に関しては、遠隔会議システムおよび(可能となれば)対面での研究会を年に4回実施し、研究報告とディスカッションを通じて検討・研磨していく。また代表者、各分担者それぞれの単著論文の執筆も進め、各専門の国内学術雑誌に随時投稿していく。
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Causes of Carryover |
本年度は新型コロナウィルス感染拡大に伴い対面での研究会の開催を見送ったため、旅費の全額を使用することができなかった。また物品費についても、各分担者や各研究機関の事情もあり当初の計画通りに使用することが難しかった。さらに本年度は学会なども開催中止となるケースもあり、研究成果の発表に関しては次年度以降に集中して行うこととなった。本年度に生じてた繰り越し分については、研究会開催および学会出張の旅費として使用することを予定するとともに、編著書『ロスト欲望社会』の研究成果の公表の一環として献本費やイベント開催費に使用することを計画している。
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Research Products
(9 results)
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[Book] 実践的消費者読本 第6版2021
Author(s)
圓山 茂夫, 穴井 美穂子, 井上 博子, 川口 美智子, 白﨑 夕起子 , 松原 由加 , 丸山 千賀子
Total Pages
121
Publisher
民事法研究会
ISBN
4865564187
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