2020 Fiscal Year Research-status Report
日本と南洋群島の互助ネットワークについての民俗社会学的国際比較研究
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20K02091
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Research Institution | Ryutsu Keizai University |
Principal Investigator |
恩田 守雄 流通経済大学, 社会学部, 教授 (00254897)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 相互扶助 / 再分配的行為 / 小口金融 / 互助慣行の移出入 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究は南洋群島の互助慣行の先行的調査としてサイパン島とテニアン島にて、聞き取り(半構造化インタビュー)調査をする予定であったが、新型コロナウイルスの感染状況の収束が改善しないため令和2(2020)年8月の調査を断念し、また翌年3月の現地調査も難しいため文献調査だけを余儀なくされた。現地調査に代わるものとしてオンラインによるインタビュー調査を予定し、サイパンではOffice on Aging, Department of Community & Cultural Affairs、テニアンではNorthern Marianas College, Tinian Centerを通して通訳の確保や戦前戦中を知るインタビュー可能な日本人の依頼をしたが実現できないまま終わった。文献調査では、小口金融として知られる無尽が当時銀行や信用組合がないためサイパンのガラパン地区で盛んに行われていたことを見出した。これはヒト(労力)やモノ(物品)、カネ(金銭)を提供し、その成果や一定量を分かち合う再分配的行為(モヤイ)のうち、労力モヤイや物品モヤイと並ぶ金銭モヤイにあたる。「海の生命線」とされ裏南洋(ミクロネシア地域)では南洋庁による委任統治(1922年)が始まると、パスポートが必要なく日本円が通用する利便性もあり拓殖政策から農業移民が多くなり、また鉱物資源や物産の開発、その他商売で一般移住者が増える過程で沖縄人がこの小口金融を伝えたとされる。しかし沖縄呼称のモアイではなく無尽であるのは、頼母子の呼び名が一般的な関西からではなく関東出身者が多くいたためと思われる。その方法は掛金よりも少なく受け取る「割引式」で、複数の無尽に入る人もいるなど昭和10(1935)年頃まで盛んに行われていた。この日本の無尽が現地チャモロ人にも伝えられたものと推測される。こうした点は「互助慣行の移出入」と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2(2020)年8月と令和3(2021)年3月に予定していたサイパンとテニアン島の現地調査は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う海外渡航の自粛により中止せざるを得なくなり、直接現地人から互助慣行について知る機会がなかった。オンライン・インタビューの可能性も模索したが、現地でのチャモロ語通訳を見つけることができず、文献調査を中心に進めるしかなかった。なおこれまでの互助慣行の成果として、東アジアにおける金融互助の英語論文を査読付きで掲載することができた。また昨年度1年間研究を継続した東南アジアの互助慣行のうち、半島マレーシアについて学会で報告し(日本社会学会オンライン開催)、東マレーシアのサバ州とサラワク州についてはオンライン・インタビュー調査を中心に論文(大学紀要)としてまとめた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き南太平洋の互助慣行について、令和3(2021)年8月と令和4(2022)年3月に現地調査を予定しているが、新型コロナウイルスの感染状況によっては引き続き調査ができないことが予想される。この場合はオンライン・インタビュー調査などの方法を考え、また文献調査中心に進める予定である。なお関連の研究成果として、東南アジアの互助慣行のうちマレーシアについては経済社会学会(オンライン開催)の全国大会で報告する予定である(令和3年9月)。
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Causes of Carryover |
令和2(2020)年8月と令和3(2021)年3月に予定していたサイパンとテニアン島の現地調査は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う海外渡航の自粛により中止せざるを得なくなり、直接現地人から互助慣行について知る機会がなかった。オンライン・インタビューの可能性も模索したが、現地でのチャモロ語通訳を見つけることができず、このため旅費と謝金については支出がなかった。次年度以降支出計画の見直しにより適切な支出に努めたい。
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Research Products
(3 results)