2023 Fiscal Year Research-status Report
公共事業の補償と利益還流――日本におけるダム事業の社会的影響を可視化する
Project/Area Number |
20K02095
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
浜本 篤史 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (80457928)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 立ち退き / 土地収用 / 補償 / 生活再建 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ダム事業にともなう社会的影響に関するデータを収集し、その全体像を把握・分析することを目的としている。これを通じて、日本において公共事業にともなって生じる犠牲に対する政策パッケージがいかなるものか、その特質を明らかにすることを企図するものである。 2023年度はまず、前年度までの成果として、主に庄川流域を対象とする水力発電事業について大正期から高度成長期の地域補償の時代的変遷を分析した論文を刊行した。 また、水源基金が設置されている流域でこれまでデータ収集が手薄だった吉井川、ダム周辺地域活性化という政策課題でよく取り上げられる三春ダム、宮ヶ瀬ダム、日吉ダム、釜房ダム、七ヶ宿ダムなどを事例対象とする現地調査を実施した。後者のうち、三春ダム、宮ヶ瀬ダム、日吉は以前に実施した調査データと照らしてその経年変化を確認できたが、近年ではアウトドアメーカーがキャンプ場運営などで水源地域活性化の主体としての役割を担っている新たな動向を把握することができた(この成果の一部は、日本河川協会の機関誌において、ダム立地地域における住民の存在と補償交渉過程の可視化や記憶継承に関する論稿として発表した)。さらに、是非論をめぐって複雑化・混迷化している事例として九州の石木ダムおよび川辺川ダムの事業動向をフォローしつつ、事業対象住民への対応がどのような形式をとるのか把握につとめた。 以上、全体として2023年度は、現地調査に基づくデータ補完を進捗させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
過年度において新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受けたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査研究において、研究目的を達するために必要なデータをすべて網羅できたとはいえないが、一定の範囲でのとりまとめが可能な段階には到達したので、2024年度は当初計画に沿ったアウトプットを目指したい。
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Causes of Carryover |
過年度において新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受け、研究計画を進捗できなかった部分がある。これを次年度に実施予定である。
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