2020 Fiscal Year Research-status Report
International Comparison on Super-diversity from International migration and Citizenship Reconstruction
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20K02097
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
樽本 英樹 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (50271705)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 超多様性 / 市民権 / 国際移民 / 比較社会学 / 社会統合 |
Outline of Annual Research Achievements |
先進諸国を中心として進展している「市民権再編」を考察するために、まずはその背景を形作っている「超多様性」を理論的実習的に捉えようと試みた。 超多様性は、多様な背景を持つ移民が流入し定住しているヨーロッパや北米の諸社会を特徴づける概念として提唱されている。典型的な例として英国に着目すると、1990年代以降、(1) 移民の新たな流れ、(2) 旧植民地以外からの流入、(3) 移民の使用する言語の増大、(4) 新たな宗教、特にイスラム教の存在感増加がまずは超多様性の「構造」を形成しているという。そしてこれらの構造的要素は移民の種類を多様化させるとともに、ジェンダー、年齢、滞在地、トランスナショナリズムに関して以前とは異なる変化をもたらしているという。 しかし、超多様性はヨーロッパや北米以外の地域の国々でも現れていると考えられるのだろうか。日本に注目すると、第二次世界大戦前は、朝鮮半島、台湾、中国大陸からのいわゆるオールドカマーと呼ばれる人々が主に入国し、定住していた。1980年代半ば頃から、いわゆるニューカマーが世界各地から日本に移住してくるようになった。現在、ニューカマーは、熟練労働者から中南米の日系人、企業の研修生や技能実習生、介護福祉士などに広がっています。この多様性に拍車をかけているのが、新設された政策である。日本は2019年4月から非熟練労働者を事実上公式に導入し始めた。累積的な多様性は、統合の問題を提起している。喫緊の課題としては、在日韓国・朝鮮人を疎外するヘイトスピーチデモやインターネット上のヘイト書き込みの解決がある。 このように見ていくことで、超多様性概念は欧米を超えた記述説明能力を持ちうることがわかった。しかし、日本のような「欧米ほど多様性が進んでいない」と見られる社会に応用するには、概念的な精査が必要であることも同時に明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の中、海外における調査研究を進められないものの、最も重要な概念である超多様性をめぐる理論的研究を考察することができた。また理論的成果をオンラインによって開催された国際学会で発表し、各国の研究者からレビューを受けることができた。したがって、当初の計画通りの理論的な発展は達成できたと判断できる。今後は超多様性の内実に関する理論的整備を進めると同時に、市民権再編との関連付けを理論的に進める。そして、コロナ禍が終息次第、海外調査研究を行う予定である
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方向性は以下の通りである。 第1に、超多様性を有用な理論概念に鍛えるべく、多様性をめぐる類型論を理論的に構築する。 第2に、多様性の類型と市民権再編とのメカニズムを考察することにする。まずは理論的考察を先行させる。 最後に、コロナ禍が終息したタイミングで海外調査研究を実施し、各国における超多様性と市民権再編の具体的様態を明らかにする。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、海外における調査が実施できず、また国際学会も中止またはオンライン開催になったためである。コロナ禍が終息次第、海外調査研究を実施しできる。加えて、国際学会も現地開催になることが予想されており、出席し研究発表を行う予定である。
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