2020 Fiscal Year Research-status Report
グローバル文化戦略としての「食」: 「ニッケイ料理」をめぐる階層の力学
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20K02102
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
竹中 歩 立命館大学, グローバル教養学部, 准教授 (60564680)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 移民研究 / 食文化の歴史 / 食の政治 / 国民料理 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画では、ペルーで実地調査を開始する予定であったが、コロナ禍のため、海外調査を延期せざるを得なくなった。そのため、本年度は、研究計画の一部を変更し、資料収集と文献レビューに従事することとした。オンライン上で閲覧可能な世界中のアーカイブを検索し、史料や文献を閲覧、そして実際に、国会図書館や移住資料館に出向いて数々の資料を収集した。中でも、日系移民の新聞データベースを活用して、詳細な記事検索を行った。同時に、オンライン上でレストランのメニューを集めるなど、オンラインでできる「フィールドワーク」方法も模索した。その一部として、いくつかオンラインインタビューを試みたが、ネット環境が整備されていない人々や、ネットに不慣れな高齢者などを対象とするインタビューをどう行っていくべきかなど、課題も浮き彫りになった。これら一連の調査は、全てリサーチアシスタントの協力を得て実施した。 今後は、様々な工夫を凝らしながら、オンラインでのインタビュー調査を継続したいと考えている。資料の収集と整理、ならびにレストランのメニューの分析も、リサーチアシスタントと共に継続する。また、今年も海外調査が難しいと予想されるため、ペルーに在住するリサーチアシスタントを新たに雇う準備をしている最中である。現地でしか調達できない移民資料館のアーカイブ史料や文献の収集をお願いするのと同時に、インタビュー対象者の確保やインタビュー作業のお手伝いもお願いできれば、と考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍で、海外調査を延期せざるを得なくなり、研究計画を一部変更することとなった。上記に示した通り、当初はペルーでインタビューとアーカイブ調査を計画していたが、渡航が不可能となったため、オンライン調査に切り替え、そのための準備と計画の立て直しに時間を有することになった。また、海外調査ができなくなった分、国内調査に重点を置き、図書館での資料収集を行い、史料のデータベースの検索などに時間を費やした。 世界各国でデータのオンライン化が急ピッチで進むなか、数多くの資料がインターネットを介して入手できることを学んだが、一方で、戦前のペルーに関する一次史料はネット上ではまだ限られている現状がある。今回、そうした現状を掴むことだけでもかなりの時間を割いてしまい、その結果、フィールド調査に遅れをとる形となったが、今後は、新たな調査技法を模索し続けながらも、オンラインで可能な調査を優先させ、遠隔協働を実現しながら、研究を続けていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、オンラインを介してフィールド調査を展開していくが、その際、現地のリサーチアシスタントを雇うだけでなく、国内のネットワークを広げていくことで、海外調査ができない問題を克服していきたいと考えている。 まず、第一に、国内に在住するラテンアメリカ出身者を対象にインタビュー調査を実施したい。過去に行った調査を通して構築したネットワークを活用し、主に年配者を中心に、対面もしくはオンラインでインタビューを行う。その際、「オーラルヒストリー」技法を用い、昔の食生活などを振り返ってもらうことを試みる。 次に、国内の研究者と協働することで、幅広く情報交換を行い、研究技法を模索していきたい。今年度は「ラテンアメリカにおける日本人移民に関するトランスナショナルな歴史研究」と題する関連テーマの共同研究が開始されるため、その協働作業やセミナーを通して、ペルー以外の史料や情報が広くアクセスできるものと期待できる。
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Causes of Carryover |
当初は、一年目に海外調査を予定しており、そのための予算を計上したが、海外での調査は全て延期することとなった。そのため、予算に余りが生じたが、渡航が可能となった時期にその分を回したいと考えている。また、海外で予定していたインタビュー調査の一部をオンラインに切り替えていくため、そのための謝金にも予算を投じたい。今後は、国内のみでなく、海外でもリサーチアシスタントを雇って調査を展開していくため、そうした人件費が当初の計画より若干増えることが予想される。
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