2020 Fiscal Year Research-status Report
労働、所得、社会保障、世帯構造が母子世帯の育児時間に与える影響に関する研究
Project/Area Number |
20K02105
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
田宮 遊子 神戸学院大学, 経済学部, 准教授 (90411868)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 母子世帯 / シングルマザー / 生活時間 / 育児 |
Outline of Annual Research Achievements |
育児時間をめぐる関心事の一つに男女間の育児時間ギャップがあり、先進諸国の父親と比較しても、日本の父親の育児時間がきわめて短く、圧倒的に母親に偏っている実態が挙げられる。その背景には、男性の長時間労働があり、労働時間の短縮により父親の育児時間を伸ばし、ワーク・ライフ・バランスを確保することが政府の政策目標としても掲げられている。男性の育児時間に関心がむけられている一方で、そもそも育児時間自体は先進各国において長時間化する趨勢があることはあまり知られていない。また、男女間の育児時間ギャップが注目される一方で、夫婦世帯と母子世帯との間で育児時間に格差がある事実についての関心は低い。 本研究では、育児時間が長時間化する趨勢があるなかで、シングルマザーの育児時間に着目し、夫婦世帯と母子世帯との間の育児時間ギャップの実と、その格差をもたらす要因を探ることを目的としている。 今年度は、子どものいる世帯の生活時間の30年間の変化を分析し、世帯間の育児時間ギャップの実態を明らかにした。夫婦の育児時間については、父親の育児時間が増加するとともに、母親の育児時間も長時間化しているために、ジェンダー・ギャップは依然として大きいままとなっていた。家事時間のように、父親が家事に費やす時間が増加しているのに対し、母親の家事時間は減少することで、ジェンダー・ギャップが縮小している無償労働とは傾向が異なっていた。シングルマザーの育児時間については、夫婦世帯の父母と同様に増加傾向にあり、とりわけ1996年から2011年の間は大幅に増加した結果、夫婦世帯の母親との育児時間格差は徐々に縮小傾向にあった。しかしながら、2016年には、夫婦世帯の父母ともに育児時間が増加しているなかで、シングルマザーの育児時間のみが減少に転じ、結果として夫婦世帯と母子世帯間の育児時間ギャップは再び拡大するに至っていることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題について、最新の研究動向のレビュー、ならびに、サーベイデータの二次分析による分析を進め、その結果について学術論文として執筆、刊行を遂行している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題について、引き続き最新の研究動向はフォローしながら、日本の生活時間調査の二次分析を進める。また、英国に関して利用可能な生活時間調査の分析にも着手し、日英比較の準備を進める。
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Causes of Carryover |
使用予定であった旅費が新型コロナウイルス感染拡大防止のために中止となり、旅費の支出が不要となったことから次年度使用額が生じた。次年度に同様の研究会への参加を予定しており、そのための旅費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)