2021 Fiscal Year Research-status Report
労働、所得、社会保障、世帯構造が母子世帯の育児時間に与える影響に関する研究
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20K02105
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
田宮 遊子 神戸学院大学, 経済学部, 教授 (90411868)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生活時間 / 母子世帯 / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、母子世帯の生活時間と所得・世帯構造の分析から、子育て世代の貧困問題の特徴、貧困削減・防止のための社会政策の役割と効果を明らかにすることを目的としている。母子世帯の所得と生活時間の関係から、貧困リスクから免れ、かつ、労働時間(有償労働と育児を含む無償労働の総計)と余暇との均衡が保たれている状態を健全な生活と措定し、12か国の生活時間調査を用いて比較検討した。欧州11か国(イギリス、ベルギー、ハンガリー、ポーランド、ドイツ、フィンランド、フランス、ギリシャ、オーストリア、イタリア、スペイン)については、Harmonised European Time Use Surveys(HETUS)のWAVE2010のデータを用い、日本については、HETUSと比較可能な総務省統計局2011年「社会生活基本調査」の「国際比較用分類(EU区分)」のデータを用いた。分析結果としては、経済的貧困と生活時間の配分に関する類型的な特徴が見いだされた。すなわち、母子世帯の貧困率の低い国々(ギリシャ、フランス、フィンランド、ベルギー、ドイツ、イギリス)では、母子世帯の母の総労働時間、余暇、ならびに、休息の3者の均衡のとれた生活時間配分が見いだされる一方、母子世帯の貧困率の高い国々(日本、イタリア、スペイン、ポーランド)では、母子世帯の母の総労働時間が長く余暇時間が短い傾向がみられた。前者のグループ(貧困率の低い国々)に属するオーストリアとポーランドの母子世帯の母に関しては、総労働時間が長く余暇時間が短い後者のグループ(貧困率の高い国々)と同様な生活時間の特徴を有しており、やや異なる傾向がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、生活時間に関する日本のデータ(総務省統計局「社会生活基本調査」)と、欧州のデータ(Harmonised European Time Use Surveys)とを用いた国際比較分析を行い、一定程度の新たな知見の発見があり、論文化し投稿する準備を整えた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、今年度までに得られた知見をふまえ、研究協力者とともに、公表が予定されている最新の欧州のデータ(Harmonised European Time Use Surveys)を用いて生活時間の国際比較分析を行う予定である。さらに、生活時間の定量的な分析をふまえ、日欧の社会保障制度との関係から、母子世帯の経済的貧困と時間貧困との関係を政策研究の観点から実施する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、当初予定していた国際学会での報告のための出張、研究協力者との研究活動のための出張を注視したため次年度使用額が生じた。
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