2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on Social Impacts of One Child Policy in Chinese Rural communities
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20K02108
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
閻 美芳 宇都宮大学, 雑草と里山の科学教育研究センター, 講師 (40754213)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 一人っ子政策 / 村落コミュニティ / 農業の担い手 / 農地の流動化 / 持続可能性 / 都市居住 / 美しい郷村づくり / 兼業化 |
Outline of Annual Research Achievements |
一人っ子政策の実施は、中国の村落コミュニティにどのような影響を与えたのか。コロナウィルス感染症の影響で、現地調査に行けないなか、アンケート調査票を作成し、現地の研究者の協力のもと、アンケートを通して把握してみた。調査地は安徽省、山東省(西部)、山東省(中部)の三ヶ所である。調査対象の安徽省の稲作農村では、水田の基盤整備は行われておらず、村に残っている高齢の農家(60歳以上)は機械の購入に投資するより、外部資本に農地を賃貸して、借地料で生活の安定を図ろうとしていた。一方、村の若者は県、市政府の所在地のほか、武漢、上海、広州などの大都市に出稼ぎに行き、農繁期でも農業の手伝いのために村に戻らず、村落コミュニティの運営に携わろうとしない。 他方、山東省(西部)の農村では、一人っ子政策後に生まれた若者の離農が進むものの、落花生、生姜、長芋などのような経済作物に取り組む農家も多い。また、村には葬式を仕切る「村社」とよばれる生活組織があり、出稼ぎによる村人の流動化が高まるなかにおいても、村人を束ねる機能を果たしている。 三番目の調査地である山東省(中部)の村は、小麦とトウモロコシの二毛作となるが、村に大型農機具を購入した農家が5軒ほどおり、一人っ子政策後に生まれた子の親世代が死亡するなどで農地の担い手がなくなったりすると、農地はこれら大型農機具を有する農家に集中していた。他方、40代から60代の労働能力を有する村人の多くは、兼業化の形をとり、農繁期は農業を営んでいた。 三ヶ所の村を調査して、一人っ子政策後に生まれた若者が農業に従事しないという通説をデータで裏付けただけではなく、一人っ子政策後に生まれた若者の都市移住も明らかになった。それと同時に、一人っ子政策後に生まれた若者は親に寄生しているがために、村落コミュニティとつながりを保っていることも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、中国に調査に行き、現地の協力者と一緒にアンケート調査を実施する予定であった。しかしながら、新型コロナウィルス感染症がいつ収まるかわからない状況となったため、途中で計画を変更せざるを得ず、それにはやや時間がかかった。 それから、当初の予定では、中国の西部(四川省)、中部(湖北省)、東部(山東省)の三か所でアンケート調査を実施する予定であったが、中部の湖北省で教員をしている現地協力者は、新型コロナウィルス感染症の対応で忙しくなり、この研究に協力できなくなった。他方、西部の四川省で教員をしている現地協力者は、職場を大学から政府の研究機関に移動したため、協力するにあたって、制約を受けるようになった。このような状況の中で、新たな現地協力者を探して、新たに調査地を選定する対応に追われるようになった。 上記のような理由で、調査の実施は当初の予定より、やや遅れる運びとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、研究課題の2年目にあたる。当初の研究計画では、アンケート調査で得た結果を踏まえて、2021年は時間をかけて現地調査を実施し、村の幹部、能人(エリート)、若者にインタビューを行い、一人っ子政策の実施が村落社会の持続可能な発展にどのような社会的影響を与えたのか、多方面から検証をする予定であった。 しかしながら、新型コロナウィルス感染症がまだ収まっていないなか、2021年も中国に現地に行けるかどうか、先行きが不透明な状況となった。そのため、2021年は現地調査が実施できる、できないの二つのケースを想定して、計画を練り直すことにした。一つ目は、現地調査ができない場合である。新型コロナウィルス感染症の影響で、現地調査ができない場合、2020年度のアンケート調査で得たデータをもとに、論文を執筆する予定である。それと同時に、現地の協力研究者に声をかけ、学会で2020年度の調査結果を発表する予定である。 二つ目、現地調査ができる場合である。新型コロナウィルス感染症が収まり、中国と自由に行き来できる状況となったら、現地の協力者に声をかけ、計画通り、現地で時間をかけて聞き取り調査を実施したい。そのためには、基礎データの収集、2020年度に調査したデータの分析を行い、調査の再開に備えたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の影響で、現地調査などができなかったため、旅費などの支出がなくなり、その費用は2021年度に回すことができた。 2021年度も、新型コロナウィルス感染症の影響がどこまで響くか、読めないところがあるものの、現地調査に行けるような状況になったら、すぐに現地調査をするように備えたい。そのために、旅費、現地協力者への謝金などの支出を考え、2020年度の繰り越しと一緒に金額を計上した。
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