2022 Fiscal Year Research-status Report
Study on Social Impacts of One Child Policy in Chinese Rural communities
Project/Area Number |
20K02108
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
閻 美芳 龍谷大学, 社会学部, 講師 (40754213)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 一人っ子政策 / 農村コミュニティ / 若者の都市移住 / 流動化 / 離農 / 有機農業 / 新規就農 / 高度人材の越境 |
Outline of Annual Research Achievements |
二〇二一年、中国現地の協力者の協力のもと、三箇所の農村の若者の都市移住および農家の経営規模実態を把握した。その調査結果に基づき、一人っ子政策後に生まれた中国農村の若者の都市移住および、農村に暮らす人々の世界観に関する論文「生活論からみた中国農村の人びとの生活合理性―都市化・流動化に生きる山東省一農村を事例に―」を執筆した。この論文は『年報村落社会第58集 生活者の視点から捉える現代農村』(農山漁村文化協会、2022)の第四章として掲載された。この論文では、日本で蓄積されてきた生活論という方法論に基づき、政治構造、経済構造とは異なる、人々がそのように信じて疑わない精神的な位相から村の生活を捉える試みをした。この論文では、村人の「他律的合理性」、村の「個人的性格」、「村人の相互扶助と共同性」のほか、村人の生活意識の生成の過程にまで降りて、「死者とともに生きている」村人の世界観を踏まえて、村人の合意形成のプロセスを考察し、「体情」の生成原理を見てきた。 それと同時に、中国のインタネット上の情報を駆使して、中国の高学歴の若者の有機農業就農と農村振興に関する論文「中国におけるCSAの展開にみる若者の農村への「越境」-流通事業型CSAの取り組みを事例にー」を執筆した。この論文は学術誌『日中社会学研究』の第29号(2022)に掲載された。 そのほか、日本に越境する中国の高度IT人材に焦点を当て、孫育てのために日本に呼び寄せられた彼・彼女らの親世代の日本への越境と日本の団地でのコミュニティ形成に関して、聞き取り調査と参与観察をもとに考察した。その成果を日中社会学会の2022年の冬季集会で「中国IT人材が形成する越境コミュニティの考察 ―埼玉県川口市芝園団地を事例として―」というタイトルで報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
主な理由は、新型コロナウィルス感染症で中国への渡航が制限され、当初予定していた中国農村調査ができなくなったためである。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度も、新型コロナウィルス感染症で中国への渡航が制限され、現地調査ができる見通しが立たなかった。そのため、研究の対象を日本に越境する中国人にフォーカスすることで対応せざるを得なかった。そうした中で、中国高度IT人材の越境に関するインタビュー調査と参与観察、一人っ子政策後に生まれた新世代中国人留学生の越境と自立に関するアンケート調査、中国帰国者(残留孤児二世)のインタビュー調査を実施するようになった。調査の成果はこれから論文などの形で公表していく予定である。 2023年度、新型コロナウィルス感染症による中国への渡航制限が解除され、中国農村調査は再開できると思われる。現地協力者の協力でアンケート調査を実施した3か所の中国農村に聞き取り調査と参与観察に行くことを予定している。それによって、一人っ子政策後の実施が中国の農村コミュニティに与えた社会的影響を量的調査だけではなく、質的調査からも検証していく予定である。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:コロナ感染症のため、2022年度、当初予定していた中国調査ができなかったためである。 次年度の使用計画:中国現地の協力者と合流して、アンケート調査を実施してもらった三箇所の農村に入り、それぞれのところで1週間ほど、フィールド調査を実施する予定である。現地までの宿泊費、交通費、現地協力者への謝礼金などを調査費用として計上する予定である。調査結果を踏まえて、学会発表、論文執筆をする予定である。
|