2021 Fiscal Year Research-status Report
調査票調査におけるセンシティブな質問への回答に対する調査員の影響の計量的研究
Project/Area Number |
20K02110
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小林 大祐 金沢大学, 人間科学系, 教授 (40374871)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 忠彦 統計数理研究所, データ科学研究系, 准教授 (10247257)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 調査員効果 / 社会的望ましさバイアス / 日本人の国民性調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画通り,2021年度上半期は,単一の調査の中で個別面接法の調査員属性を個票データと紐付けて利用できる無作為抽出全国調査データの2次分析を行うという,本研究課題の目的を達成するために,統計数理研究所が2012年に実施した「国民性に関する意識動向2012年度調査」のデータの整備を行った。この調査では面接と留置の調査モードが併用され, 調査員情報についても利用することの内諾を得られていたため,まずこの調査を用いて,そこで詳しく聞かれている政治意識や投票行動について,調査員の属性の回答内容への影響を,自記式モードにおける同一項目の分布とも比較して分析した。その結果,調査員の性別が特定の質問における特に男性の回答に影響を持っていることを示唆する結果が得られた。このような分析結果にもとづき,2021年度下半期は日本社会学会第94回大会において,研究分担者の前田忠彦氏との共同報告「調査員が回答内容に与える影響の自記式モードとの比較による検討」を行った。そして,学会発表でもらったコメントも踏まえ,分析を深めつつ学術論文の執筆準備を行った。また,2020年度に実施した「コロナ禍における人びとの暮らしと意識についてのウェブ・アンケート調査」において得られた知見も参考にして,2021年9月に刊行された,渡邊勉・吉川徹・佐藤嘉倫編の『人生中期の階層構造』(東京大学出版会)の13章に小林が『「就職氷河期世代」の格差意識』を分担執筆した。 また研究分担者の前田氏は共著論文を1本,上記の共同報告以外に2本の学会発表を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度の研究計画においては,調査員属性がひも付けられた個別面接法による全国調査のデータの2次分析によって,調査員間変動および調査員の属性の回答内容への影響について検討することを目標としていた。このためは既存の個票データに,調査員情報をマッチングさせる必要があるが,研究分担者の前田忠彦氏の尽力により,上半期中に「国民性に関する意識動向2012年度調査」のデータの整備が終わり,そのデータを用いた分析結果の報告を日本社会学会第94回大会において,研究分担者の前田忠彦氏との共同報告「調査員が回答内容に与える影響の自記式モードとの比較による検討」として行うことができた。この知見に基づいた学術論文の執筆準備も進めており,関連領域における学術書の分担執筆も成果として出せたことからも,おおむね順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は分析結果を積極的に発表し、学術論文の投稿および学術書の出版を視野に研究を進める。具体的には、日本社会学会や数理社会学会での報告とこれらの学会誌への投稿を考えている。また,個票データに調査員情報を紐付けて使用が出来るデータとして,すでに整備の終わった「国民性に関する意識動向2012年度調査」に加えて,「日本人の国民性調査」の,2013年実施の第13次全国調査,そして2018年実施の第14次全国調査のデータの整備を進め,それが完了し次第分析に取りかかる。これにより,2021年度に「国民性に関する意識動向2012年度調査」の分析から得られた傾向が頑健なものといえるのかについて検討を進める。
|
Causes of Carryover |
コロナ感染状況が依然落ち着かないなかで,海外旅費はもちろん研究分担者との打ち合わせや学会発表とための旅費がほとんど未使用となったことが次年度使用額が生じた理由である。2022年度は海外渡航が可能な状況であれば海外での学会発表を検討している。また,センシティブ項目の回答内容に生じる偏りの大きさについて追加調査を行うことも視野に入れている。
|
Research Products
(5 results)