2021 Fiscal Year Research-status Report
Mechanism of Social Capital for Disaster Resilience
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20K02111
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
三隅 一百 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (80190627)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 災害 / 社会関係資本 / レジリエンス / コモンズ / コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、安全や防災力のような地域コモンズ管理の観点から災害レジリエンスを捉え、コモンズ管理のために社会関係資本を持続的に機能させる仕組みを探求することである。令和2年度の調査および理論整備をふまえて、令和3年度もとくにフリーライダー(コモンズ管理に貢献せずにその便益だけを享受すること)が地域コモンズの供給に資する側面に着眼して、研究を進めた。 令和3年度は、本課題研究の中核となる調査研究として、熊本市での市民意識調査を実施した。令和2年度の時点では武雄市の水害ケースを加えてインターネット調査に切り替えることも検討したが、熊本市に集中して実施できる条件が整ったので、当初の予定通り、計画サンプルを2000として住民基本台帳から無作為抽出を行い、郵送調査として9月に実施した。実査は調査会社に委託し、所属大学の研究倫理審査委員会で審査受けたうえで、実施した。調査結果は回収697票、回収率34.9%であり、一定精度のデータを得ることができた。 この調査には、令和2年度に整備したコミュニティの分担・分業モジュールの概念をふまえて、防災・復興における市民の協力に向けた態度や潜在的な力を調べる質問をおいた。また、市民の日頃からの地域社会への関わり方や、他の様々な生活側面での社会参加のあり方から、社会関係資本の状況を幅広く捉える質問をおいた。「クロスロード」の質問も2問、組み入れた。令和3年度は、これらの質問から、日常的な社会参加のあり方と、とりわけ2016年熊本地震時の支援行動との関係に主眼において、データ分析を進めた。その際、地震の被害状況と、社会的な脆弱性との関連にも留意した。 その暫定的な成果を国際会議を含むいくつかの学会大会で報告した。また、熊本市民へのフィードバックのために調査レポートを作成し、2022年3月にホームページで公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度の時点ではコロナ禍の見通しもあり、市民意識調査の内容について、武雄市の水害ケースを加えてインターネットで実施する変更を考えたが、熊本調査に集中できる条件が整ったので、当初の予定に戻して実施することができた。回収率についても想定していた水準を達成することができた。 データ分析も順調に進めることができ、4回の学会発表を行うとともに、市民向けの調査レポートを公表して一定の社会還元を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
コモンズ管理のために社会関係資本を持続的に機能させる仕組みを、コミュニティの分担・分業モジュールの概念にもとづき、フリーライダーの活用という観点から、調査データのより本格的な分析を通して、実証的に明らかにする。学会報告だけでなく論文公表を行う。 また、「クロスロード」を軸にして、調査結果を市民の防災復興の取り組みに実践的に生かす方法についても具体的な検討を進める。
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