2021 Fiscal Year Research-status Report
Family sociological studies regarding inter generational reproduction of poverty and low income
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20K02117
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
稲葉 昭英 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (30213119)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 貧困 / 子ども / 定位家族 / ひとり親世帯 / 世代的再生産 / ライフコース / メンタルヘルス / 社会階層 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度はコロナ禍で対面の研究会が実施できず、オンラインでの研究会は2回にとどまった。2回の研究会では、三宅雄大(お茶の水女子大学)、吉武理大(松山大学)、稲葉昭英が報告を行った。それぞれ「社会的権利に関する市民意識の調査研究」「母子世帯における生活保護受給の抑止要因」「結婚の脱制度化命題の検討」である。研究会には山下亜紀子(九州大学)、杉野勇(お茶の水女子大学)、吉田崇(静岡大学)、斉藤知洋(国立社会保障・人口問題研究所)、余田翔平(国立社会保障・人口問題研究所)、根岸弓(法政大学)、大久保心(慶応義塾大学)、夏天(慶応義塾大学)などの研究者が参加し、有意義な情報交換ならびに議論を行うことができた。 2021年10月にドイツから研究協力者のFrederick de Moll(ルクセンブルク大学)が来日、3か月間と短期ではあったが日独の子どもへのかかわりの階層間の差異に関する比較研究に着手することができた。この研究は現在も続行中であり、国際学会での報告および論文投稿を目指している。また、2022年2月より研究協力者であるConner Zelmer(慶應義塾大学)と、日本の若年高学歴カップルを対象に育児と仕事の両立に関するフィールドワーク(長期的な参与観察およびインタビュー)を開始し、現在も継続中である。 研究代表者の研究業績としては、日本家族社会学会機関誌『家族社会学研究』への査読論文投稿を行い、「貧困と子どものメンタルヘルス」が掲載された。また、日本離婚再婚家族と子ども研究学会大会にて「離別母子世帯における非同居親と子との関係性が子に及ぼす効果」の報告をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初から、貧困と子どものライフコース、社会階層の世代的再生産に関心をもつ研究者が相互の研究を参照し、情報交換をしていくための研究会であり、現在のところこれらの課題は十分に達成できている。公共利用データを用いた計量的な研究の成果も確実にあがっており、この点も順調に進展している。ただ、計画していた出版については、コロナ禍ということもあり出版事情があまり芳しくなく、これについては再検討を余儀なくされている。de Mollとの共同研究は、日本側が適切なデータを提示できておらず、まだ本格的な分析ができていないが、これもなるべく早く進ませたいと思っている。
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Strategy for Future Research Activity |
この2年間、対面での研究会が全くできず、関係者の交流が十分だったとはいえない。できれば本年は、対面での研究会を実現したいと考えている。Frederick de Mollとの研究は、年内での成果報告は難しくなりそうだが、国際学会で報告する予定。また、Conner Zelmerとの共同研究は学会報告などの形で報告していきたい。稲葉自身は年内に投稿論文を2つ予定し、執筆中である。過去2年間、予定していた出張費がほとんど使えなかったので、結果として繰り越し金が多額になっており、最終年度においては有効に使うことを考えていきたい。
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Causes of Carryover |
対面での研究会の旅費を多く計上していたが、コロナ禍でまったく開催できず、このために2年続けて大きく金額が残ってしまった。また、国際学会など海外出張もすべて断念しているため、大幅に出張費に残額が生じている。今年度は研究協力者であるFrederick de Moll, Conner Zelmerとの共同研究に研究費を使用するほか、国内の研究協力者との対面による研究会を実施する予定である。
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