2020 Fiscal Year Research-status Report
地域街づくり活動における情報システムの「使いこなし」と共進化についての実証的研究
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20K02120
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
中村 雅子 東京都市大学, メディア情報学部, 教授 (00217895)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | クラウドファンディング / 情報システム / 地域の生態系 / 共進化 / 地域活性化 / 運営者 / 提案者 / 支援者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、情報システムが街づくりに効果的、継続的に活用されるためには、1)情報システムの「使いこなし(domestication、馴化)」やシステム側の適応・変更が求められる一方、街づくりの活動や組織、ネットワーク作りも変化する「共進化」が必要であることを、2)個別の情報システムだけでなく、それを一部とする各地の情報の地域生態系(社会-技術的ネットワーク)を分析単位とする比較分析およびオンライン調査に基づき実証的・多面的に検討することを目的としている。 その検証のための素材として、地域系クラウドファンディング(特定地域の活性化や貢献をミッションとして掲げる運営者によるクラウドファンディング)をとりあげた。クラウドファンディングは、単に技術に媒介された人と人のコミュニケーション・ネットワークだけに注目するのではなく、人やモノ、さらに資金の移動などの多様な要素をもともと含んでいる。その意味で街づくり活動にとって重要な仕組みであり、研究価値が高いと判断したためである。しかしながら、進捗の欄で後述するように本研究はCovid-19感染拡大で大きな影響を受けた。本来予定していたクラウドファンディング調査対象地への対面訪問取材ができなくなったため、文献調査を進めるほか、メールで各地の関係者と情報交換を行って、各地のクラウドファンディングサイト運営者へのCovid-19の影響について情報収集を行った。全国の地域系クラウドファンディングサイトのウェブページ調査から得られた情報による分析を中心として、調達した情報システムと地域系クラウドファンディングの活動状況の関係について分析し、従来からの蓄積と合わせて、両者が密接な関係にあることを実証的に明らかにした。この成果については国内学会において発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の主要な手法は、1)多様な関係者へのインタビューと現地での活動への参与観察、2)クラウドファンディングサイトのウェブページのコンテンツ情報収集、などである。2020年度は、1)サイト運営者、提案者、地域の行政などの関係者へのインタビュー 2)ウェブサイトからの情報収集 3)成果の国内発表を行う予定だった。このうち、中核的な活動であった1)サイト運営者、提案者、地域の行政などの関係者へのインタビュー については、2020年4月からの緊急事態宣言に基づく移動の制約や、それを受けて示された勤務先大学からの国内出張の原則禁止指示が続いたことなどから、ほとんど実施できなかった。その代わりとして、2)サイトの情報収集と、従来からの取材データの再分析、メール等による地域系クラウドファンディング関係者との情報交換などを中心に研究活動を継続した。これらの活動の成果として、国内学会発表1件を行うことができ、発表時には学会参加者の関心を得て意見交換することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もCovid-19による国内の長距離移動自粛への社会的要請は当面、続くと思われる。研究活動は不要不急という定義には当てはまらず、また勤務先大学の国内出張の原則禁止指示はすでに解除されているので、その意味では取材活動は可能なのだが、一方で取材先の心情として首都圏からの訪問を望まない雰囲気が続くことも予想される。一方で、明るい見通しの材料もある。一つはワクチン接種の進捗によって取材先の抵抗感が低下するのではないかという期待である。ただしこれにはまだ一定の時間がかかると思われる。もう一つは、取材方法の多様化である。研究開始時(2020年4月)には、まだ多くの人々にとってオンラインでのコミュニケーションは不慣れで抵抗感が大きかったため、ときに取材先にとって答えにくい質問も繰り出すような踏み込んだインタビュー取材は難しいと判断し、オンライン取材の設定は断念した。しかし、その後の1年間で、一般の人々にもZoomなどによるコミュニケーションへの慣れやソフトの習熟が進んだと予想される。 このことから2021年度は、手法的には対面取材より得られる情報の質が落ちることが懸念されるものの、次善の策としてオンライン取材を中心に進めることを検討する。また、その他に2021年度に実施予定だった一般市民への予備調査は当初よりオンライン調査を想定していたため、遅滞なく実施できると期待している。以上のような点から2021年度には2020年度の積み残しの部分も実施して研究スケジュールを挽回できると考えている。
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Causes of Carryover |
出張を伴う取材がCovid-19のため実施できず、旅費や取材関連経費(インタビュー文字起こし作業の委託費など)が支出できなかった。次年度以降、感染拡大状況の動向を見て柔軟に対応するが、出張を伴う取材が引き続き困難と判断した場合には、取材方式を再検討してオンライン取材を実施して支出するほか、対面取材を補うためにオンライン調査を追加してその分の費用にあてることを検討する。
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