2021 Fiscal Year Research-status Report
東アジアからみる北欧ケアシステムの持続性-高齢者ケアをめぐる公私アクターの関係
Project/Area Number |
20K02124
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
大塚 陽子 立命館大学, 政策科学部, 教授 (30368021)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ケアシステムのサステイナビリティ / 持続要因としてのジェンダー平等 / 持続性のための国家を超えた情報共有や政策協調 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021(令和3)年度も引き続きコロナ禍、それに加えてウクライナ情勢によって研究協力者の日本への招聘および現地への渡航計画が二転三転し、影響を受けた。 研究内容としては、本課題のメインテーマである「ケアシステムの持続性」に特化した年であった。研究成果は『SDGs時代におけるサステイナビリティ学』(法律文化社 2022年)のなかで「高齢者介護とサステイナビリティ」の章としてまとめた。サステイナビリティ(持続可能性)は地球温暖化など環境問題からとらえられがちであるが、本稿ではSDGsの17の目標のうち、人の生活を構成する目標を高齢者介護のサステイナビリティという視点から問い直した。これは高齢者ケアに携わる者たちが東アジアや北欧といった社会の違いによってどのように構成されているかを公私アクターの関係から検討し、北欧の事例から、ケアシステムを持続させていくには、人の生活を構成する各目標が個々ではなく、トータルに好循環するような動態的しくみを生み出すことが重要であることを示唆した。 また、3月17日には日経WEPコンソーシアムにおいてアイスランド駐日大使とダブル講師として登壇し、「北欧にはなぜジェンダーギャップ指数上位の国々が多いのか」をテーマに講演をおこなった。上位国である一因として、北欧福祉モデルという理念に向かうための北欧諸国間における競争と協調、社会政策やジェンダーに関わる比較可能な情報共有の重要性を強調した。これは本課題の研究の目的の一部でもある。 他にも北欧のジェンダー平等と社会のサステイナビリティに関するメディア取材を数多く受け、発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
北欧と東アジアを射程に入れたケアシステムのサステイナビリティについては、既述の通り一定の研究成果を発信した。 2021(令和3)年度の主たる目標であった「高齢者ケアをめぐる公私アクター関係の変化に関する調査実施」については、2度も期間変更を余儀なくされたが、2022年5月6日からデンマークに滞在できるようになったため、これから現地において実施する予定である。タイミングよく、北欧の研究者たちが類似テーマに関する調査結果を発表したため、これを参考にしながら発展させていく。 10月に実施予定をしていた研究協力者とのシンポジウムに関しては、先方の意向もあって次年度に延期することとなった。資料収集については、北欧理事会や北欧各国が発信している情報を入手してきたが、協調の実態については若干検証不足なため、これから現地においてより深い資料を入手する。
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Strategy for Future Research Activity |
2022(令和4)年度の前半は、予定より遅れた現地調査や現地の研究協力者との研究交流を質の高いかたちで進めていく。入国に支障がなければ(現在、制限あり)、アイスランド・ノルウェーにも赴き、聞き取り調査を実施する予定である。そして、年度の後半は、研究協力者を日本に招聘して、マクロ的な視点から、福祉のサステイナビリティに関するシンポジウムを開催する。そして、研究成果を日本語および英語論文としてまとめ、その後、共著本を刊行する予定である。
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Causes of Carryover |
既述の通り、コロナ禍およびウクライナ情勢の影響により、渡航および招聘計画が次年度に繰り延べとなった。渡航については、5月~8月、招聘については、10月に執行する。
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