2023 Fiscal Year Research-status Report
東アジアからみる北欧ケアシステムの持続性-高齢者ケアをめぐる公私アクターの関係
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20K02124
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
大塚 陽子 立命館大学, 政策科学部, 教授 (30368021)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高齢者ケアシステムの持続性 / 北欧と東アジア / ケアの温かい手 / ケアとテクノロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、11月16日(木)に国際シンポジウム「東アジアからみる北欧ケアシステムの持続性-高齢者ケアをめぐる公私アクターの関係」を開催した。ゲストスピーカーとして3名の研究協力者を招聘した。デンマークで福祉国家史を専門とするKlaus PETERSEN教授は、北欧の共通理念である「北欧福祉モデル」の下で、デンマークの高齢者ケア政策に生じたこの20年間の変化は、テクノロジーやロボットの活用と民間部門の参入によるケアの質の低下であったと指摘した。過去の経済成長で培われてきたケアの質への期待に応えられないほど、ケア労働者の「温かい手」が不足する事態に社会的ジレンマが発生し、議会でも活発な議論がおこなわれていると説明した。韓国で社会政策を専門とするSang Hun LIM教授は、社会サービス部門における社会経済組織(SEO)の役割についての研究を紹介した。多くのSEOは政府の支援を受け社会的弱者の就労など社会的価値を高める支援をしているが、地域コミュニティとのつながりが希薄なため、民主的なガバナンスのあり方が地域福祉のサステナビリティの課題となっている点を指摘した。中国の経済学者で公共経済、社会保障を専門とするYang YU教授は、この20年間における日本と中国の高齢者ケア制度の多様性について講義した。日本では、保険料・税金・自己負担の3つの部分からなる独立した高齢者介護保険制度を実施しているが、中国では、医療保険政策に基づく高齢者介護制度の実験が行われている。ケア人材不足を解消するために、両国ともICTやDXを進めているが、運用には新たな課題が次々と生じ、介護ロボット市場も限定的であることを指摘した。北欧と東アジアの福祉課題と格差は近接してきており、各国とも福祉のサステナビリティに向けて、財源、人的資源、社会関係資本、ケアの質をめぐって試行錯誤していることが浮き彫りとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
<公表論文> (1)単著 「グローバル時代の海外福祉事情Vol. 28 アイスランドのジェンダー平等とケア労働① ―ジェンダー平等の最先進国となった背景」『月刊福祉』 第106巻第9号 特集 福祉と人権 全国社会福祉協議会 2023年9月 92-95頁。(2)単著 「グローバル時代の海外福祉事情Vol. 29 アイスランドのジェンダー平等とケア労働② ―ケアの担い手が抱えるジェンダー・パラドックス」『月刊福祉』第106巻第10号 特集 2040年を見据えた高齢者支援のこれから 全国社会福祉協議会 2023年10月 92-95頁。(3)単著 「高齢者ケアとジェンダー ―日本とアイスランドからの一考察」『都市計画』366号 特集 ジェンダーと都市計画 日本都市計画学会 2023年12月 58-63頁。 <国際シンポジウム開催> 「東アジアからみる北欧ケアシステムの持続性-高齢者ケアをめぐる公私アクターの関係」2023年11月16日(木)14:40ー17:50 立命館大学 大阪いばらきキャンパス。 <その他> (1) 単独講演会「ジェンダー平等先進国『北欧』のワークライフバランス」 福島県南相馬市 2024年1月24日(水)15:30-17:00。(2) NHK Eテレ「地球は放置しても育たない ―どう実現する?男女の平等」オンライン取材 2023年7月29日(土)17:30-19:00。(3) 共同通信社 「男女平等世界一の国で」オンライン取材: 2023年10月13日(金) 10:30-12:30、対面取材: 2024年1月12日(金)13:00-15:00
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Strategy for Future Research Activity |
2022年8月に実施したアイスランドインタビュー調査と2023年11月16日に実施した国際シンポジウムを合わせた形で、立命館大学Journal of Policy Scienceの特集号を発刊する。 また、2024年11月28日(木)14:40-17:50立命館大学大阪いばらきキャンパスにおいて、前回、スケジュールの都合で登壇できなかった研究協力者であるStein KUHNLE名誉教授を交え、軍事費の増大によって社会保障費が削減され、北欧福祉国家が深刻な危機に直面する現在、「北欧福祉モデルのサステナビリティ」をどうするかについて議論し、東アジアと近接する課題を再考する国際シンポジウムを開催する。その成果は、洋書として出版する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大による研究計画変更等に伴い、補助事業期間を再度延長したため。 次年度は、国際情勢による軍事費の増大により、北欧福祉国家最大の危機が迫る現在、北欧福祉モデルをどのように維持してゆくのか、また、日本および他の東アジア諸国で強固な課題となっている、福祉社会のサステナビリティのためのジェンダー平等政策、ダイバーシティ政策に関連して、北欧諸国がどのように家族構成員の役割意識を変えていったのかを1960年代~70年代に遡って検証した研究成果の発表をしてもらうために、北欧の研究協力者を複数名招聘した国際シンポジウムを立命館大学において11月28日に開催する。助成金は主にそのために使用する。
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