2020 Fiscal Year Research-status Report
在日朝鮮人を取り巻く言説空間:「北朝鮮」表象を中心に
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20K02128
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
李 洪章 神戸学院大学, 現代社会学部, 准教授 (20733760)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 かほり 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (30295571)
金 泰植 早稲田大学, 地域・地域間研究機構, 客員次席研究員 (20827406)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 在日朝鮮人 / エスニシティ / ナショナリティ / 祖国訪問 / 北朝鮮・韓国報道 / リベラリズム / ヘイト・スピーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度はコロナウイルス感染拡大の影響で当初予定していた調査研究を進めることが困難であったため、3度研究会を開催し、既存の調査データに基づくアウトプットと、今後の調査計画の立案に注力した。 李は、朝鮮民主主義人民共和国に研修を目的として「祖国訪問」する在日朝鮮人青年の訪朝経験の語りを通して、「ウリ(我々)」概念を、祖国人民や他の在日朝鮮人との共同性を表すものとして遂行的に獲得する様子を描き出した。この成果は、松田素二ほか編著『日常的実践の社会人間学 都市・抵抗・共同性』第16章に収録され、すでに出版されている。 山本は、朝鮮学校生徒が、祖国への修学旅行を通して、個別の「祖国観」を形成する様子を描き出し、それが「プロパガンダ/洗脳」とは程遠い、朝鮮に対する一定の疑問や、在日朝鮮人の置かれた状況を踏まえた、主体的な実践であることを明らかにした。 金は、E・サイード『イスラム報道』に示唆を受けながら、日本における「北朝鮮」・韓国報道とヘイトスピーチの歴史的変遷と問題点について整理・考察した。その結果、たとえば、リベラル層が保守と「北朝鮮」を悪魔化する視点を共有する背景に、従来朝鮮を無批判に肯定してきたことへの反省があるのではないかといった、今後の研究課題になるであろう論点が浮かび上がってきた。 また、在日朝鮮人に関する言説・表象分析の一環として、近年発表された在日朝鮮人に関する重要文献の合評を行なった。第3回研究会においては川端浩平著『排外主義と在日コリアン』を取り上げた。来年度以降も、メンバーの研究報告と並行して継続する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウイルス感染拡大の影響で、当初計画していた調査を進めることができなかった。しかし、既存の調査データに基づくアウトプット、資料の整理・考察、在日朝鮮人研究領域における先行研究の批判的検討を進めることで、新たな研究課題を発見し、調査計画を立案することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
李は、在日朝鮮人学生による訪朝経験について、その後、自らのライフコースにいかに位置づけているのかについて、オンラインでの追加調査を実施する。 山本は、李と共同で、当初の計画通り、朝鮮学校無償化支援運動における日本人支援者による在日朝鮮人のエスニシティ/ナショナリティ理解のあり方について、感染防止に配慮しながら調査を実施する。 金は、北朝鮮/韓国報道やリベラル言説にみられる「日本型オリエンタリズム」について、資料の分析を進める。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大に伴い、当初の計画どおり調査を進めることができなかったため。来年度以降、海外渡航が可能になり次第、当初計画の大韓民国および朝鮮民主主義人民共和国における国際研究集会と調査を企画・実施する。期間内の実施が困難な場合は、補助事業期間の延長を申請する。
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Research Products
(4 results)