2022 Fiscal Year Research-status Report
在日朝鮮人を取り巻く言説空間:「北朝鮮」表象を中心に
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20K02128
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
李 洪章 神戸学院大学, 現代社会学部, 准教授 (20733760)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 かほり 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (30295571)
金 泰植 早稲田大学, 地域・地域間研究機構, 客員次席研究員 (20827406)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 在日朝鮮人 / ナショナリティ / エスニシティ / 朝鮮学校 / 表象 |
Outline of Annual Research Achievements |
・李は、在日朝鮮人のエスニシティ研究の展開と課題についての整理を行いつつ、「帰還」の視座から在日朝鮮人大学生の訪朝経験に関する事例の分析を進めた。既存の研究が、日常/非日常、帰国/移住、同胞/他者、はざま/あいだの二分法に陥っており、それらの交点において在日朝鮮人の物理的・想像的移動を捉える必要性について考察した。なお、この成果は2023年度関西社会学会大会シンポジウム「社会学と在日朝鮮人研究」において報告予定である。 ・山本かほりの単著『在日朝鮮人を生きるー<祖国><民族>そして日本社会の眼差しの中で』(三一書房,2022年)の合評会(2022年8月27日 愛知県立大学サテライトキャンパス)を開催し、またそこでの議論をふまえ、在日朝鮮人にとっての<祖国>と<民族>の現在的意味を問う書評シンポジウムを2023年2月3日に朝鮮大学校で開催した。従来、異化の最たる事例として、ナショナリズムと直結して捉えられがちであった朝鮮学校における教育と、朝鮮民主主義人民共和国への修学旅行を、能動的にナショナリティを獲得しようとする営為として捉え直すことの意義と、「北朝鮮」をめぐって強力な政治的磁場が働くなかでそれを記述することの困難さがより明確になった。 ・金は、第15回コリア学国際学術大会(国際高麗学会)において、総連系在日朝鮮人の表象をめぐるポリティクスについて、「スープとイデオロギー」をはじめとした映像作品を事例に議論し、家族関係までをも規定するようなイデオロギーを、日常的実践のなかで乗り越えようとする自己表象を、日本のリベラルによって無批判に称揚されることの問題を指摘した。また、在日朝鮮人がいかなる冷戦的/ポスト冷戦的現実に直面しているのかを描くべく、在日朝鮮人当事者の韓流受容に関する研究を開始し、事前調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ハイブリッド形式で研究集会などを開催することで、研究成果を吟味・精錬する機会を設けることができたが、対面でのインタビュー調査が行いづらい状況が続いたため、愛知朝鮮高校無償化裁判関係者へのインタビュー調査に基づいた、社会運動に携わる人々の「朝鮮観」に関する研究を進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は以下の5点について調査・研究を推進する。 ①2023年10月に、ソウル大学校人類学科BK研究団との共催で、「在日朝鮮人の生活と国家」をテーマとした合同セミナーを開催する。 ②李は在日朝鮮人のナショナリティとライフコースの関係について、金は韓流ファンの嫌韓認識についての論考を発表する。 ③李と山本が共同で、愛知朝鮮高校無償化裁判関係者へのインタビュー調査を実施する。 ④金が、在日朝鮮人当事者の韓流受容についての研究を進める。 ⑤朝鮮大学校で開催したシンポジウムの報告書を作成する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大が続くなかで、当初の計画通りに調査・国際研究集会を開催することができなかったため。
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