2021 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Impact of Realistic Turn on Sociological Theory: A Reconsideration from the viewpoint of "Ontology / Epistemology"
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20K02129
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
清家 久美 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 教授 (00331108)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 新実在論 / ドレイファス=テイラー / 実在論/観念論 / 接触説/媒体説 / M.ガブリエル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、社会学ないし社会学の方法論を〈存在論/認識論〉の視点から整理することにより、新たな思想潮流としての実在論的転回が社会学ないしは社会学の方法論にどのような影響を与えうるかを検討することである。 2021年度は、実在論的転回の一つである新実在論の中心的な論者であるM. ガブリエルの思想に焦点を当てることによって、新実在論はわれわれに、ないしはわれわれの社会に何を提案しようとしているのかという問題意識のもと、先行研究に見る哲学史における実在論と観念論の対立という伝統的な問題系の反復として現在の実在論的転回を捉えるということを試みた。しかしながらこの実在論/観念論という対立軸は、単なる哲学史上の反復に止まらない含意を孕んでおり、それを引き出すためにドレイファス=テイラーの提案する接触説/媒介説の視点の援用を試みた。また哲学の研究領域だけではなく、現代の社会科学の知のあり方を検討することにより実在論的転回、特にガブリエルの新実在論が何をしようとしているかを明らかにすることを目的とし、研究を進めた。 接触説/媒介説という枠組みを通して実在論的転回の動きを眺めてみると、近代哲学史において接触説を基本とするシェリングが媒介説を主張するカント哲学を超克しようとしたことを、ガブリエルは現代において、媒介説を基本とした社会科学の知のあり方を接触説のシェリングに依拠して批判し乗り越えようとしていると言えるのではないだろうか。つまり新実在論は,現代の知において支配的な媒介説に依拠した対象によって構築された世界観として考えるのではなく、接触説に基づき直接触れることができるものとして対象を捉え得る世界観を提案していると結論づけられる。 2021年度は以上の研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、新たな思想潮流としての実在論的転回が社会学ないしは社会学の方法論にどのような影響を与えうるかを検討することとして研究を進めているが、2021年度は哲学史における実在論と観念論の対立という伝統的な問題系の反復として現在の実在論的転回を捉えるということを試みた。ドレイファス=テイラーの接触説/媒介説という枠組みを通して実在論的転回の動きを眺めてみると、近代哲学史において接触説を基本とするシェリングが媒介説を主張するカント哲学を超克しようとしたことを、ガブリエルは現代において、媒介説を基本とした社会科学の知のあり方、あるいは社会学における構築主義的な考え方を接触説のシェリングに依拠して批判し乗り越えようとしていると言える。彼が提案した意義諸領野について、それが社会学の構築主義を乗り越えた可能性を提示していると考えられる。 さらに、フレーゲにおける「意義と意味について」を解釈し、それによりガブリエルの「意義諸領野」における存在論の理解を進めた。まずは彼にとって存在あるいは存在の意味とは、意義諸領野の性質である。認識に関わるもので人間に固有のあり方、とりわけ知や知覚に通じた知は存在するもののうちに根付いており、なぜならば彼の主張においては人間は自分自身との間に存在論的な距離を取るものではないので、したがって新実在論においては存在するもののすべては意義諸領野の性質であるということに結実される。 これらは2022年度の研究に続く内容であり、意義諸領野については上記の構築主義との関係についてを論じてきたが、さらなる研究の深化の進捗も提示しておく。 以上から現在までの研究の進捗としては、十分であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究において、①哲学史における実在論と観念論の対立という伝統的な問題系の反復として現在の実在論的転回を捉えるということを試みたが、ドレイファス=テイラーの接触説/媒介説という枠組みを通して実在論的転回の動きを眺めてみると、近代哲学史において接触説を基本とするシェリングが媒介説を主張するカント哲学を超克しようとしたことを、ガブリエルは現代において、媒介説を基本とした社会科学の知のあり方、あるいは社会学における構築主義的な考え方を接触説のシェリングに依拠して批判し乗り越えようとしているということを見出した。②さらに意義諸領野の存在論を追求することにより、構築主義に代替する方法論の模索をしてきた。また、③それに関連してフレーゲにおける「意義と意味について」を解釈し、それによりガブリエルの「意義諸領野」における存在論の理解を進めてきた。 2022年度は、以上の3点をさらに深化させていく予定である。具体的には、1.シェリングのカントの構築主義的な世界観についての批判点の追求 2.意義諸領野の把握と構築主義的な方法論との比較検討 3.フレーゲのさらなる解釈による意義諸領野の可能性と問題点の提案 さらに、4.新実在論と批判的実在論との比較検討による新実在論の位置づけの明確化という問題を、2022年度の研究テーマとして付加する。おそらく新実在論と対立する批判的実在論をその比較的視点において考察することによって構築主義の問題点の明示化や、新実在論や意義領野の存在論の位置づけも明確になると考えられる。
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Causes of Carryover |
【次年度使用額が生じた理由】今年度コロナ禍において、①学会出席 ②マギル大学でのシンポジウム開催 ③新潟での方法論的検討のための調査 以上3点の実施困難、かつ学会のオンライン開催により使用額が生じなかったが、①③については、2022年度ではその使用額は生じることとなる。②については、2022年度実施できるかどうかはまだ未確定である。 【使用計画】2022年度は、上記したように、上記①社会学理論学会、社会学史学会、日本社会学会などの学会での発表 上記③の調査実施 以上2点を使用計画としている。 その他文献購入等については、予定通りの使用計画とする。
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Research Products
(3 results)