2022 Fiscal Year Research-status Report
北関東における原発事故被害の不可視化に抗う住民活動 ―権利回復をめぐる課題
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20K02130
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
清水 奈名子 宇都宮大学, 国際学部, 教授 (40466678)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯塚 和也 宇都宮大学, 農学部, 教授 (20344898)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 原発事故 / 北関東 / 被害の不可視化 / 住民運動 / 測定調査 / ジェンダー / 人権 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度の研究実績は、以下の通りである。第一に、2020、21年度に引き続き、那須塩原市と那須町の5軒の宅地敷地内における土壌中の放射性セシウムの測定調査を実施し、原発事故から11年が経過した福島近隣地域における放射能汚染状況についてのデータ収集を継続した。また調査協力者との研究会を開催し、時間が経過してもかえって土壌汚染が増している一部の採取地点に関する分析を行った。これらの分析の成果を、論文として発表している。 第二に、関東地域で甲状腺検査を実施している関東子ども健康調査支援基金の検査会場での参与観察と、受検者を対象とした無記名アンケートを、栃木県真岡市、那須塩原市、矢板市、宇都宮市において実施した。事故後11年を経た2022年時点においても、初めて検査を受ける受検者がいること、長期間にわたって事故による健康影響について懸念をもっている受験者が多いことが確認された。これらの調査結果は、関東子ども健康調査支援基金の総会において報告し、同基金の刊行物にも調査結果のデータを提供した。 第三に、茨城大学、東北大学の関係者とともに実施した、茨城県、宮城県、栃木県内の基礎自治体を対象とした原発事故対策に関するアンケート調査を分析する研究会を開催し、栃木県の結果を分析する論文を発表した。 第四に、原発事故後の住民運動を担ってきた福島県内の関係者4名に聞き取り調査を行い、その内容を引用する形で学会報告や論文執筆を行った。論文は2023年度の刊行を予定している。 第五に、上記の調査研究の結果、特にジェンダー格差が増幅した原発事故被害を人権侵害として捉え、分析を進めた結果を、学会報告、招待講演会、原稿執筆を通して社会に発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で予定していた調査、研究活動を、ほぼ予定通り実施することができているため。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、以下の調査研究を予定している。 第一に、引き続き栃木県北地域の宅地敷地内の土壌測定調査を続け、同じ地点の定点観測を続けることで、北関東地域も含めて広範囲に拡散した放射性セシウムに関するデータの収集を継続する。 第二に、原発事故後の住民活動の事例として、引き続き関東子ども健康調査支援基金による、栃木県内での甲状腺検査会場における参与観察とアンケート調査を継続することで、福島県外の低認知被災地において、住民が事故の被害をどのように認識しているのかについて調査を行う。 第三に、2023年12月までに、2020年以降の調査研究期間中に行った聞き取り調査、測定調査、アンケート調査、資料分析の結果を、調査報告書としてまとめて刊行するためのデータ整理と編集作業を行い、2023年度内の刊行を目指す。 第四に、その内容を踏まえて、国連人権理事会による2013年の原発事故後の健康を享受する権利に関する報告書や、2022年に来日調査を実施した国連人権理事会の国内避難民の人権に関する特別報告者セシリア・ヒメネス=ダマリーによる報告等を参照しながら、日本政府に遵守が求められている国際人権法上のいかなる権利が低認知被災地において脅かされているのかについて分析し、研究会報告や論文として発表する。その際には、国内の原発避難者、原発被災者に関する裁判判例についてもあわせて分析を行い、国際人権法上の権利の保障が原発事故被害とどのような関連をもって論じられているのかについても検討する。 第五に、担当する関連授業科目において研究成果を取りあげ、市民向けの公開授業とするほか、公開の研究会やシンポジウムを開催することで、広く社会に向けても研究成果を公表する機会を設定する。
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Causes of Carryover |
予定していた聞き取り調査対象者の都合で、調査が2023年度に延期となったため、そのための必要経費を繰り越すことにした。
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Research Products
(7 results)