2021 Fiscal Year Research-status Report
困難さを伴う「死別」経験に対する物語論的アプローチを用いた実践的研究
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20K02132
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
水津 嘉克 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (40313283)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 死別経験 / 自死遺族 / 物語論 / 生きづらさ / スティグマ |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍によりインタビュー調査などを実施することが困難な状況が続いたため、今年度は主に(応募書類においても研究目的のひとつとしてあげた)“「死別」経験への物語論的アプローチの理論的課題”の整理と再考の作業を行った。 主な作業内容としては、以下の三つをあげることができる。 ①物語を生きる/物語を語るという二つの生のあり方を統合して分析していくための理論的枠組みの精緻化 ②「二人称の死」が何故われわれにとって特別な経験(エピファニー)となるのかに関して、シュッツによる議論を元にその内実を社会学的に理論家を試みる作業 ③セルフヘルプ・グループ的な営みを物語論によって分析していくための先行研究の整理 である。 とりわけ②に関しては、これまで「愛情」や「親密な関係」という、社会学的にはきわめて曖昧なものと言わざるを得ない言葉によって語られてきた現状を理論的に乗り越えることを最大の目的としており、①③において進めている作業と整合性をとりつつ、この二年間でとりためた先行研究のノートを参照しつつ議論を前進させることにかなりの時間を費やした。この作業は、以前に発表した論文(水津嘉克 2015 「『人称態』による死の類型化再考 ─多様な死・死別のあり方に向き合うために」 有末賢・澤井敦(編著)『死別の社会学』: 144-172)での議論を前進させることでもあり、本研究の一つの核でもある。 ①②③それぞれ、今年度の段階では結論を書き切れておらず、求めている認識利得を確実に言語化できていない状況ではあるが、最終的には単著として成果をまとめるべく、引き続き各作業を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで分担執筆や雑誌投稿論文、そして学会発表の等において発表してきた研究成果において積み残してきた課題をクリアする形で議論を進めるべく、論文を書き進めてきている状況である。 インタビュー調査などは困難な状況であるが、自死をめぐる公的データの探索や自死遺族の方達が書かれた手記集のテキスト化なども進めている。 上記の作業の過程でこれまでみえなかった新たな課題も出てきているが、それも今年度の一つの研究成果であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは「研究実績の概要」で記した作業をやり遂げることにある。 今回頂いている科研費による研究の目的の一つは、これまでいただいてきた研究費による各研究成果において課題として積み残してきたことを整理・再検討し、まとめ上げることにあるので、引き続きそれが研究推進の方針となる。 具体的な作業工程としては、①物語を生きる/物語を語るという二つの生のあり方を統合して分析していくための理論的枠組みの精緻化と ②「二人称の死」が何故われわれにとって特別な経験(エピファニー)となるのかに関して、シュッツ等による議論を物語論に還元しつつ社会学的に探っていく作業を、まず一段落させることが目標となる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた最大の理由は、予定していた調査や学会への参加が果たせなかったことにある。 差額は主に旅費として使用する予定である。
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