2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K02143
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
安藤 丈将 武蔵大学, 社会学部, 教授 (50434220)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会運動 / 農 / 香港 / 民主化運動 / 食 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、香港の民主化運動の中から生まれた「菜園村生活館」という農場の実践を対象にしている。生活館における農がいかにして社会運動であるのか、すなわち、農を運動にしている条件を考察してきた。 私は、生活館における「社会運動としての農」を可能にしているのが、 「永續農業(パーマカルチャー)」であるとみて、パーマカルチャーの果たしている役割を分析した。 農民たちの実践哲学であるパーマカルチャーは、 彼らをエンパワーメントし、 自然の拘束の中で自然に生かされる方法を示している。 また、 資本主義や植民地主義のような政治、 社会的な拘束から解き放ち、 農民たちに根源的な自由の展望を示している。 それと同時に私は、エンパワーメントの両義性にも注目した。近年の食べ物運動(food movements、あるいはfood activism)の研究が示すように、エンパワーメントは、必ず社会運動に結びつくわけではなく、 社会問題の私事化に帰結してしまうこともある。 私は、生活館のケースに即しながら、エンパワーメントと社会変革の集合的実践とを結びつけたのが、抵抗の歴史の想起、顧客、さらにはボランティアへの支援の呼びかけという三つの条件であることを示した。 以上のように私は、農を私事化させる要因に注意を払いながら、 生活館の農が経済行為や趣味活動のように私事化されることなく、社会運動的な性格を保持させた条件を論じたのが今年度の成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
既述のように、生活館におけるパーマカルチャーと社会運動についての論文は執筆できたものの、研究計画と比べれば現状は研究がやや遅れていると言わざるを得ない。 遅れの最大の理由は、現地調査ができなかったことである。当初は2回ほど現地を訪問する予定だったが、断念せざるを得なかった。一つは、新型コロナウイルスの影響で、香港に渡航することが制限されていたためである。これは、2019年11月の申請段階では予想もできなかったことであった。もう一つは、香港国家安全維持法の制定で、治安情勢が見通せなくなっていることである。これもまた申請段階(まだ逃亡犯条例反対運動の参加が盛んな状態であった)では予想もできなかった。 予想もできないことが二つも重なり、フィールド調査ができていない。現地の書店に最新の書籍を送ってもらったりして、文字上の情報を入手し、議論のキャッチアップには努めている。しかし、現地の取材と参与観察は、本研究課題の中心的な作業である。フィールド調査ができなかったため、研究の進展に関しては大きな遅れを受けることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、調査に関しては、新型コロナウイルスの収束を待つ。zoom等でインタビューをすることも可能であるが、農に関する研究は、現地の状況を見ることが必要不可欠である。また、たとえ収束したとしても、香港国家安全維持法の及ぶ範囲を見定めて調査をしなくては、現地の情報提供者に悪影響を及ぼす恐れもある。調査の再開は慎重に進めざるを得ず、我慢のしどころであると考える。幸い、すでに過去の取材の蓄積があるので、これに文献調査を加えて、研究の成果を出していくことに力を注ぎたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスと香港国家安全維持法のために現地調査ができず、未使用額が生じた。次年度請求額と合わせ、2021年度以降の現地調査あるいは現地調査ができない場合は資料購入費の一部として使用する計画である。
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Research Products
(1 results)