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2020 Fiscal Year Research-status Report

日本と台湾の油症事件における被害構造と救済制度構築過程の比較環境社会学的研究

Research Project

Project/Area Number 20K02144
Research InstitutionRissho University

Principal Investigator

堀田 恭子  立正大学, 文学部, 教授 (20325674)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 宇田 和子  高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (90733551)
Project Period (FY) 2020-04-01 – 2025-03-31
Keywords食品公害 / カネミ油症 / 受容克服過程 / 主観化 / 主体化
Outline of Annual Research Achievements

食品公害問題を含む公害問題を制度・政策的な視点から分析考察するために環境制御システム論の理論解釈を水俣病問題を事例にまずは行った。公害問題が中枢的政策課題となったとしても、その政策を検証することは必要である。その政策が効果的でなければ、あるいは解決ができなければ、その段階は課題の中枢化までいかずに副次的課題の段階であると認識できる。その問題の中枢的諸課題とは何か常に検討する必要がある。
他方で油症患者の受容克服過程の分析をするために、リスク論に依拠し「主観化」と「主体化」という言葉を鍵概念として概念の精緻化を行った。水俣病の場合はリスク認知が高いが故に患者として認定されることを避けて人々は潜在化した。油症の場合はリスク認知が低いからこそ、リスクそのものがわからないことにより結果的に人々は意図せずに潜在化した。水俣病の場合は既知リスクによる回避行動としての潜在化であり、油症の場合はリスクがよくわかっていないからこその意図せざる潜在化であった。そのため、まずはそのリスクを自分ごととして受け止めることが必要であり、それを「主観化」とした。つまりPCB・ダイオキシン類とそれがもたらす油症の被害が自分の身体的実感(体調の悪さ等)につながることが主観化である。世代を超えた害をもたらす化学物質の場合、当事者たちの現実のプロセスから学ぶことは重要である。そのため2世(親=1世が幼少時、汚染油を食した後、結婚して生まれた子どもたちで汚染油は食していない世代)にも着目した。水俣病患者であれば当事者たちは申請行為・提訴をするなどの克服行為をとる。それら克服行為を「主体化」とした。
カネミ油症の被害者においては水俣病患者とは違い地域集積性や病像が得られにくいため、「受容」のためには油症ということに関しての「主観化」が必要であり、さらに克服過程においては「主体化」が行われていたことが確認された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

昨年度は台湾に行き、現地調査を実施する予定であったが、コロナ禍のため、実施できなかった。そのため国内での油症患者調査の実施を考えていたが、それすらも困難な状況であった。特に油症患者は基礎疾患患者としても置付けられる。これまで実施してきた調査データの洗い出しを中心におき、さらに公害問題全体における分析理論の確認等を文献中心に実施した。

Strategy for Future Research Activity

今年度も現地調査は難しいと思われるので、まずは過去の調査データの再読み込み、台湾油症においては関連資料の翻訳を経ての読み込みを行う。
また台湾油症患者の受容克服過程と主観化・主体化の関連性の考察のための過去データによる生活史の構築を行う。日本でのカネミ油症患者のさらなる受容克服過程と主観化・主体化のための生活史の構築とその分析考察を実施する予定である。
同時に日本の厚労省が実施している健康実態調査の新規データの確認と経年変化のための入力を行い、分析考察を深める。

Causes of Carryover

コロナ禍のため、台湾での油症患者・支援者・研究者への現地調査が不可能となった。また日本国内でも西日本を中心とした油症患者へのヒアリング調査がすべて不可能となってしまった。特に油症患者は基礎疾患患者として位置づけられるので、配慮が必要である。そのため、台湾油症調査に関しては、ネットで入手できる資料に対する翻訳作業を中心にして、データの収集を試みる。
国内調査においては、油症患者に対する対面調査は困難なので、手紙や場合によってはオンラインでのヒアリング調査も試みるが、基本的には分析考察をするための理論枠組みの構築をすべく文献収集・研究会参加・論文執筆等に力を入れる。

  • Research Products

    (2 results)

All 2020

All Book (2 results)

  • [Book] 環境問題の社会学2020

    • Author(s)
      茅野恒秀、湯浅陽一、宇田和子、堀田恭子、角一典、朝井志歩、大門信也
    • Total Pages
      344
    • Publisher
      東信堂
    • ISBN
      9784798916477
  • [Book] カネミ油症事件50年記念誌2020

    • Author(s)
      長崎県五島市カネミ油症事件50年記念誌編さん会議
    • Total Pages
      120
    • Publisher
      五島市

URL: 

Published: 2021-12-27  

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