2022 Fiscal Year Research-status Report
娯楽の近代化とショー・ビジネスのグローバル化に関する社会学的研究
Project/Area Number |
20K02148
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
宮本 直美 立命館大学, 文学部, 教授 (40401161)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 文化社会学 / 音楽社会学 / 演劇社会学 / 娯楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は近代におけるグローバルな娯楽産業の形成過程を探求するものだが、2022年度は19世紀から20世紀におよぶ劇場ジャンルの状況について、近代化の文脈の中で分析を行なった。 ヨーロッパのロンドン・パリとアメリカのブロードウェイで展開された劇場ジャンルは、芸術志向を強めるオペラと、娯楽性を多面的に発展させたミュージカル関係ジャンルとに分化してゆく。その際、どのような特徴が「芸術」として見なされるのか、他方「娯楽」はどのような変化を辿るのかという点に注目し、ジャンル論という美学的な問題と、都市化・技術革新・メディア文化の隆盛・マーケティングといった社会的な問題がどのように関係しているかを分析した。劇場の娯楽文化は特にポピュラー音楽の展開と強く連動しており、流行やテクノロジーの発展に対して俊敏に反応し、形式を変えてゆく。「芸術」視されるものがある種の原理や規則を土台とするのに対し、娯楽文化は柔軟に変形を受け入れるのであり、その意味でミュージカルなどの劇場文化をポピュラー文化として捉える前提がより重要であることを確認した。現在の「ミュージカル」はそうした変化を経て形成されたものであり、これをはじめから単独ジャンルと見なすのは難しい。本研究では、従来はポピュラー音楽史とミュージカル史とに分かれて議論されてきた諸現象を一つの流れと派生として捉え直し、両領域の本質的な関係性を明らかにした。 これらの考察と知見を、2022年度は書籍としてまとめ、公表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
引き続きコロナ禍の影響で海外での資料調査が行えていないため、19世紀ロンドンの娯楽産業の実態に関する研究が後回しになっているが、今後は代替資料の調査も含めてこの部分についての研究を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度は引き続き、欧米の都市娯楽産業の調査と研究を進める。劇場の娯楽文化は複数の文化ジャンルが混在し、常に変化するため、それらの実態を明らかにした上で考察して整理することが必要である。そして欧米社会の近代化と共に娯楽が果たした役割を考察し、理論化に向けた研究を行う。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍により海外資料調査を行なえなかったため次年度使用額が生じた。基礎疾患があるため次年度も海外調査については慎重に可能性を探るが、同時にショービジネスに関する大型資料を代替資料として取り寄せる方向も検討中である。
|