2023 Fiscal Year Research-status Report
郊外団地における外国人住民の社会統合についての研究
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20K02158
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
坪谷 美欧子 横浜市立大学, 国際教養学部(教養学系), 教授 (80363795)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 国際社会学 / 国際移民 / 郊外団地 / 公営住宅 / コロナ禍 / 多文化共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、外国人住民に対する自治や町内会などの受け入れの論理をめぐる温度差や矛盾を明らかにした上で、外国人住民の編入状況の分析を通して、移民の社会統合の諸条件を導き出すことを目指した。 2022年~2024年に実施した神奈川県営団地周辺における団地自治会会長、事務局員、学校教員へのインタビューを分析し、このX団地が決して偶然に「国際団地」「多文化団地」になったのではないこと、多国籍の人々が住めば「多文化共生」になるのかといえば、そうではないことを明らかにした。1970年代後半からグローバリゼーションのなかで日本が「国際人権への義務を負う国」へと大きく舵を切った方向転換(宮島2022: 30)による、インドシナ難民という「フロントドア」で入ってきた人たちが、まず住宅政策という社会保障領域に包摂された。かれらは県西部の製造業や軽工業を中心に労働領域においても包摂されることとなったが、それはあくまでも技術が求められない非熟練の分野に限定されていた。一方で、かれらの団地での生活は、子どもの教育、団地の自治への関与を通した社会参加、定住とトランスナショナルの共存、高齢化へという道筋を辿ってきたことを指摘した。 一方で、この団地では、日本人の高齢化に歯止めがかからず、60歳台の外国人住民であっても「若い」住民とみなされ、自治会活動に期待が寄せられる事例を報告した。また、自治会長や役員たちから、自治会活動の担い手と「期待」される外国人住民は収入も多くなると、団地の外に家を購入し団地から出て行く傾向もあり、団地の多文化共生の担い手についても課題があることがわかった。自治会側も、自治会の活動に外国人が参加することの重要性を認識しているものの、実際にはそのような活動は少ないことが浮き彫りになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は国内の調査においては、文献収集や、本研究対象地域における自治会関係者・学校関係者へのインタビューやフィールドワークを問題なく実施することができた。 それらの結果をまとめて、横浜市立大学学術研究会および横浜学術教育振興財団の出版助成を受け、単著『外国人住民が団地に住み続ける意味―神奈川県X団地のビフォア/アフターコロナ』春風社 を出版することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、外国人集住団地における「多文化共生」に向けた課題と考えられる、担い手およびポストコロナの課題について検討していく。高齢者外国人住民、中国人帰国者専門の介護施設、団地内で活動するNPOへのインタビュー、コロナ禍で信仰活動が活発になっているベトナム、カンボジア、ラオス系の寺院、南米系教会など宗教機関への調査も計画している。 また、「国際団地」があることにより、団地内だけでなく団地周辺で育った日本人の若者へ与える影響も小さくないことも明らかになっており、団地周辺に住んでいたり団地内の小中学校に通った経験を持っていたりする日本人の若者へのインタビューも実施予定である。 以上のデータにもとづき、論文執筆や出版を予定している。
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Causes of Carryover |
協力者探しに時間がかかってしまい、インタビュー実施が当初の予定より少なくなったため、次年度使用額が生じた。
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