2021 Fiscal Year Research-status Report
小学生時からケアを担ってきたヤングケアラーについての研究
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20K02165
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
五十嵐 智子 (澁谷智子) 成蹊大学, 文学部, 教授 (90637068)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヤングケアラー / コーダ / 若者ケアラー / 子ども支援 / ケアラー支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、「メンタルに不調を感じる親を持つ子どもへの支援」をテーマとしたヤングケアラー学習教材動画を作成した。すなわち、学生たちと共に、元ヤングケアラー、家族会、ソーシャルワーカー、精神科医、ジャーナリスト、民生委員などにお話を伺い、学生たちが学習した内容を中高生に向けて自分たちの言葉で説明する「大学生と考える「ヤングケアラー」」という動画を作成した。そのDVDは、研究協力者や教育関係者、ヤングケアラー支援者に送付し、実際に活用して頂いた。 また、ヤングケアラー支援者などへの聞き取りを基に、中高生向けにちくまプリマー新書から出版される『ヤングケアラーってなんだろう』の原稿を執筆した。原稿は、スクールソーシャルワーカー、養護教諭、社会福祉協議会職員、ケアマネジャー、元ヤングケアラー、主任児童委員などに確認して頂き、そのコメントを基に必要な修正を行った。この本は、2022年5月に刊行される予定である。論文としては、「「ヤングケアラー」という視点を持った支援へ」を『精神科看護』2021年7月号に掲載したほか、「ヤングケアラーとその家族――日本の現状と1990年イギリスで起きた議論」をまとめて『障害者問題研究』2021年8月号に掲載した。 国際会議としてはは、大学院生と共に、3rd International Young Carers Conference(第3回ヤングケアラー国際会議)で「Young Carers Unable to Maintain the Household」という発表を行った。 コーダについては、コーダの手話通訳者のインタビューを基に「視覚言語と音声言語の通訳―“聞こえる”手話通訳者の語りから」を執筆し、『成蹊大学人文叢書19 意味をすくいあげて』に掲載した(2022年3月刊行)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度もコロナの状況は続き、当初予定していた『Can I Tell You About Being a Young Carer?』の著者、Jo Aldridgeを招くことはかなわなかったが、本の翻訳原稿はかなりの部分できあがり、3rd International Young Carers Conferenceという国際会議で英語発表を行ったこともあって、次年度は本の刊行とそれに伴う講演会の開催が見込めそうである。また、『障害者問題研究』や『精神科看護』といった雑誌で、ヤングケアラーと、ヤングケアラーにケアされる家族との関係性を丁寧に描き出し、ヤングケアラーを支援しようとする人たちのまなざしがケアを必要とする家族に肩身の狭い思いをさせかねないこと、家族丸ごとを支援していくことの重要性を論じた。これらの指摘は、日本において「ヤングケアラー」という言葉が広まっていく時期には特に重要であったと考えている。 また、2021年度は、参議院でもヤングケアラーに関する講演と質疑応答に臨んだほか、厚生労働省の「ヤングケアラーについて理解を深めるシンポジウム」でも講演やパネルディスカッションの司会を行った。さらには、さまざまな自治体でもヤングケアラーの講演を行い、そのような場で、今年度作成したヤングケアラー学習教材動画も使用した。こうした講演で話した内容は、著書『ヤングケアラーってなんだろう』にも反映されている。 コーダについても、視覚言語と音声言語の間を通訳することの意味を論じた論文をまとめ、次年度に向けた中高生ワークショップ開催の準備を進めている。 こうしたことから、研究は「おおむね順調に進展している」と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、『Can I Tell You About Being a Young Carer?』を出版し、10月を目途にその関係者を招いて講演会を行う。さらに、5月に著書『ヤングケアラーってなんだろう』も刊行されるため、それをふまえながら、千葉県、神奈川県、埼玉県、藤沢市、富岡市、武蔵野市、福岡市などで、講演を行い、実質的なヤングケアラー支援の工夫を提示していく予定である。教育現場での支援については、イギリスの「Young Carers in Schools」プログラムの取り組みを積極的に紹介し、それを参考にしつつも、日本に合った形の支援をどのように展開していくことができるかについて検討する。 また、今年度は、中高生コーダを対象としたワークショップを5回開催する。具体的には「大学ってどんなところ?」「親とのコミュニケーション、どうしてる?」「一人暮らしはしてみたい?」「手話通訳者ってどういう存在?」「コーダにとっての恋愛・結婚」というテーマを設定し、中高生コーダと大人コーダがそれぞれの経験や聞きたいことを話し合える機会を作る。一方で、一口に「コーダ」と言っても、時代や世代による違いも大きいことに注目し、さまざまな年代のコーダへのインタビューを基に論文を執筆して、成蹊大学文学部紀要に掲載する予定である。
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Research Products
(3 results)