2023 Fiscal Year Annual Research Report
小学生時からケアを担ってきたヤングケアラーについての研究
Project/Area Number |
20K02165
|
Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
五十嵐 智子 (澁谷智子) 成蹊大学, 文学部, 教授 (90637068)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ヤングケアラー / コーダ / 若者ケアラー / 子ども支援 / 家族支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、聞こえない親を持つ聞こえる人々(コーダ)6人と共に『コーダ私たちの多様な語り――聞こえない親と聞こえる子どもとまわりの人々』を刊行し、家族に病気や障害を持つ人がいたらすぐに「その家庭にいる子どもはヤングケアラーかもしれない」と見られる状況に対し、子どもがケアを担うかどうかは、家族状況や地域や時代によってもかなり異なることを示した。また、ケアの状況が重く家族間の対立や暴力といった面にも巻き込まれるヤングケアラーについては、「負担の大きいヤングケアラーについて考える――そのプレッシャーに子どもは耐えられるのか」をまとめ、『更生保護』2023年11月号に掲載した。 一方で、意識して心掛けたのは、子どもがケアを担わざるを得ない状況がどのようにもたらされているのかを明らかにすることである。これまでの日本社会が前提としてきた“家族”はいつの時代のどんな像を基にしていて、それは現実とどう違うのかを認識しないと、結局子どもがそのしわ寄せを引き受けることになる。『一般社団法人 日本臨床心理士会雑誌95』 第32巻第1号に掲載した「ヤングケアラー 家族ケアを前提とした制度を見直す」、『中央公論』2023年10月号「特集 病と生きる」に掲載した「ヤングケアラー対策でなお残る課題――「時間の再編」に対応した正規労働の改革を」、『都市社会研究』16号に掲載した「ヤングケアラーの孤独・孤立――アクセスしやすいサポートをいかに作るか」では、世帯人数や親戚の減少、共働き化、少子高齢化によって家族の形が変わってきている中で、長期的な視点で家族の領域や働き方を見直す必要性について論じた。
|