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2023 Fiscal Year Research-status Report

戦後日本社会における「戦後日本型生存保障システム」をめぐる言説と社会構想の配置

Research Project

Project/Area Number 20K02166
Research InstitutionChuo University

Principal Investigator

天田 城介  中央大学, 文学部, 教授 (70328988)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2025-03-31
Keywords戦後日本型生存保障システム / 分配 / 社会制度 / 言説 / 社会構想 / 歴史社会学 / 国際比較分析
Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は、戦後日本社会において「生存保障システム」と呼ぶべき仕組みがいかに形成され、変容してきたのかを解読した上で、欧州・アメリカ・東アジアとの国際比較分析を実施することを通じて、戦後日本社会における「生存保障システム」をめぐる言説の編成を提示するものである。上記の目的を達成するため、2023年度は以下3点から研究を展開した。
第一に、2023年5月に新型コロナウィルス感染症が5類に引き下げられたため、ようやく海外での調査が可能となったため、9月にベルギーでの調査を実施することができた。また、文献研究をもとに複眼的な国際比較の視点から「戦後日本型生存保障システム」を分析することを試みた。
第二に、「失われた30年」と呼ばれる現在において、いかに日本社会における生存保障システムの再構築が叫ばれているのかを考察した。特に、そこでのジェンダーの非対称性や正規/非正規の二重構造がいかに論じられてきたのかを分析した。とりわけ、海外におけるジェンダー非対称性や正規/非正規の二重構造との差異を検討する中で戦後日本型生存保障システムの特徴を分析した。
第三に、上記を個人として進めると同時に、中央大学社会科学研究所のプロジェクトとして「生存保障システムの形成と変容」(代表:天田城介)を国内外の研究者20数名で進めており、それぞれの社会において生存保障システムがいかに形成・変容しているのかについて総合的プロジェクトを展開した。これらの成果は2025年度中に英語論文として発表する。
以上のとおり、本研究は着実かつ飛躍的に発展していることは確実である。ようやくコロナ禍での制約もなくなり、当初予定していた研究活動を行える環境となってきたため、最終年度である2024年度はより積極的な情報発信を行っていく。とりわけ最終年度である2024年度には2冊の単著、2冊の編著を刊行する予定である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

現在までの達成度としては、①個人の業績として、2020年度~2022年度はコロナ禍でありながらも、着実な研究展開ができたこと、とりわけ2023年度は国内外の調査が可能となり、必要なデータを収集することができたため、2024年度にはこれまでの成果を報告することができること、②「ポストコロナ時代」においてはより合理的にオンライン会議・オンライン研究会を活用することで、より活発に国内外の研究者との共同プロジェクトを通じて「生存保障システム」という総合的なプロジェクトを展開することができたこと等から、おおむね順調に進展している。
2023年度の成果としては以下の3点が挙げられる。
第一に、ベルギー調査によってベルギー社会においては歴史的にオランダ語圏(フランデレン地域)とフランス語圏(ワロン地域)の対立が続いているが、2000年代以降は社会保障の負担をめぐって対立がさらに大きくなっていること、にもかかわらず、オランダ語圏とフランス語圏の社会学会では参照する文献も異なり、異なる言説が形成されており、こうした問題に対して必ずしも積極的に取り上げらえていないことを明らかにした。この点はきわめて大きな成果となった。
第二に、国内調査を継続的に展開できたことで、「戦後日本型生存保障システムの現在」の分析と同時に、コロナ禍で中心においた「戦後日本における生存保障システムの歴史社会学」を飛躍的に展開することができた。
第三に、コロナ禍で国際学会や国際シンポジウムなどでの報告が困難であったため、海外の社会学者や社会福祉学者に対して英語での研究成果(幅広い方々に関心をもってもらえるようあえて「講義形式」の論文とした)を2024年6月に天田城介ホームページ(https://www.josukeamada.com/)に掲載する。コロナ禍での多言語発信の成果もこのような形で結実しつつある。

Strategy for Future Research Activity

2024年度は以下3つの点から研究を遂行する予定である。
第一に、2023年9月にベルギー調査を実施することができたため、2024年3月に延期せざるを得なかった欧州調査を今年度中に実施したいところであるが、予算的にもスケジュール的にも厳しいため、国際比較分析は文献研究で補いながら進めるものとする。他方で、積極的に国内調査を継続し、「戦後日本社会における生存保障システムの現在」の分析を進めつつ、コロナ禍により中心的に進めてきた「戦後日本における生存保障システムの歴史社会学」をまとめる予定である。
国際比較分析の結果は2024年度において学術論文としてまとめる予定である。また、「戦後日本型生存保障システムの歴史的社会学」に関する論文はすでに発表済みのため、2024年度は複数の単著としてまとめ、発表する。
第二に、当初はアメリカ社会や東アジアにおける生存保障システムの形成と変容に関する分析を行う予定であったが、コロナ禍で3年間にわたって中断せざるを得なかったため、また時間的制約のため、アメリカや東アジアでのフィールドワークは断念し、膨大な英語資料をもとに文献研究を行う予定である。
第三に、2024年度は、むしろ多くの研究者にとって研究交流のプラットフォームになったオンライン会議やオンライン研究会を通じて、米国ならびに欧州の研究者との国際的な学術ネットワークの形成を積極的に図りつつ、国際学会での発表や国際研究プロジェクトの企画・運営・発表などを積極的に行う予定である。
以上のとおり、最終年度である2024年度は本研究をより積極的に展開し、研究を結実させていく予定である。

Causes of Carryover

2023年5月に新型コロナウィルスが5類に引き下げられたことから、国外調査が可能となったため、2023年9月にベルギー調査を、2024年3月に欧州調査(フランス、ベルギー、オランダなど)を実施する予定であったが、後者の欧州調査は調査対象者とのスケジュール調整が困難であったため、延期せざるを得なかった。そのため、2023年度は2024年度予算を前倒してして執行する予定であったが、上記の理由により前倒しした予算の多くを次年度予算に執行することになった。

  • Research Products

    (7 results)

All 2024 2023

All Journal Article (3 results) (of which Open Access: 2 results) Presentation (2 results) (of which Invited: 2 results) Book (2 results)

  • [Journal Article] 介護保険時代における家族介護者のケアコストと責任2023

    • Author(s)
      天田城介
    • Journal Title

      生活経済政策

      Volume: No.314 Pages: 12-16

  • [Journal Article] 「書評:岡村逸郎著『犯罪被害者支援の歴史社会学――被害定義の管轄権をめぐる法学者と精神科医の対立と連携』(明石書店、2021 年)」2023

    • Author(s)
      天田城介
    • Journal Title

      『福祉社会学研究』

      Volume: 第20号 Pages: 254-258

    • Open Access
  • [Journal Article] 天田城介.20231231.「書評:木下衆著『家族はなぜ介護してしまうのか――認知症の社会学』」2023

    • Author(s)
      天田城介
    • Journal Title

      『社会学評論』

      Volume: Vol.74、No.3 Pages: 581-582

    • Open Access
  • [Presentation] 報告者へのコメント2023

    • Author(s)
      天田城介
    • Organizer
      第21回福祉社会学会大会シンポジウム「福祉社会学会20周年シンポジウム「福祉社会学会の20年:回顧と展望」」
    • Invited
  • [Presentation] 「ポストパンデミック時代における社会学教育実践と社会調査実践をめぐる困難」2023

    • Author(s)
      天田城介
    • Organizer
      第96回日本社会学会大会シンポジウム「ポストパンデミックの社会学教育」
    • Invited
  • [Book] 『臨床哲学の歩み』182-187「解説:「気前のええお天道様」という言葉を紡ぐ哲学の人」掲載2024

    • Author(s)
      西川勝
    • Total Pages
      192
    • Publisher
      ハザ
    • ISBN
      978-4-910751-04-7
  • [Book] 『家族社会学事典』に天田城介「高齢者へのケア・介護支援の展開」掲載2023

    • Author(s)
      日本家族社会学会編
    • Total Pages
      754
    • Publisher
      丸善出版
    • ISBN
      978-4-621-30834-9

URL: 

Published: 2024-12-25  

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