2020 Fiscal Year Research-status Report
確率モデルを用いた社会調査データセットの欠損値への対処手法開発とその応用
Project/Area Number |
20K02171
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中井 美樹 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (00241282)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 不完全データ / パネルデータ / 潜在マルコフモデル / モンテカルロ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、過去数年間に進めてきた、欠損値を含む社会調査データ分析のための新しい手法をさらに拡張し、手法の改善とその有効性の検証を推進することにある。プロジェクト1年目の2020年度は、主に以下の2つの研究を軸に取り組んだ:(1)欠損値を含む調査データへ対処するための決定木アルゴリズムを用いた枠組についての先行研究レビュー、(2)欠測による偏りの補正・補完手法を用いた推定方法の大規模パネル調査データセットへの応用手法の検討、である。本研究は海外の研究協力者との共同研究により推進することから、研究メンバーが責任を持って研究遂行しつつ、研究会や学会参加を通じて本格的・集中的な議論を行う予定であったが、新型コロナ感染拡大により当初予定していた研究会や海外出張が不可能となったため、スカイプなどを使ったオンラインミーティング、サーバを用いた資料共有などを実施する形に替え、研究協力者との意見交換を行うことができた。(1)に関してはより慎重に先行研究を踏まえて進めることが有用であることから、引き続き次年度も行う。(2)のパネルデータの解析に関しては欠損値発生の問題は特に重要である。また回答者の脱落(drop-out)といった場合や、非単調な欠測(non-monotone missing)と呼ばれる欠測パターンなどがあり、データの扱いが難しい。こうした課題を明らかにすると共に考慮に入れたモデル化を行った統計手法に関して、Webミーティングツールを用いた virtual meeting形式で研究打ち合わせを行った。春学期の半年間にわたりキャンパスへの立ち入り機会が制限されたため、インターネット通信環境を整備しオンライン会議での打ち合わせや討論をスムーズに行えるようPC周辺機器等を購入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染拡大により当初予定していた研究会や海外出張が不可能となったため、今年度の目標としていた、(1)既に提案した、欠損値を含む社会調査データセットを分析するための新たな技法を改善しその有効性を検証する、という課題に関しては、今年度は問題点の把握と明確化および資料収集や調査データの検討を中心に進め、統計手法の改善を次年度に行うこととなった。とはいえ、ウェブミーティングを駆使した研究協力者とのコミュニケーションも良好で、データ活用に関する意見交換を行っており、来年度の実証に向けても大きな進展があったと言える。 (2)欠測による偏りの補正・補完手法を用いた推定方法の大規模パネル調査データセットへの応用、に関しても国際共同研究であり、パンデミック前の計画通りに進展させることができず変更を余儀なくされた。とはいえ、パネル調査のデータ形式や利用可能な統計手法、変数について研究協力者と活発な意見交換を行い、リモート会議ではあったが積極的な討論を行うことができた。データセットの予備的分析も既に進めている。変数の不完全な計測を前提とする潜在変数を用いた、加えて、カテゴリカルな観測変数の背後にカテゴリカルな潜在変数があることを仮定した潜在構造を解くモデルをパネルデータに適用するための統計手法(latent Markov modelsなど)とソフトウェアを用いた分析を次年度に速やかに進めることができる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要で述べた(1)に関しては、他の関連する応用研究をより慎重に検討したうえで、有効性や結果の解釈可能性においてより優れた方法を考案し、その有効性を社会調査データの分析により検証する。(2)のパネル調査データへの応用と有効性の実証に関しては、引き続き迅速に情報交換を行いながら解析手法の検証を進める。引き続き海外の研究協力者との共同研究により推進するため、より効果的な研究打ち合わせ方法を検討し情報交換を一層工夫するなどして計画を進める。また実現可能となった段階で研究会を実施し、社会調査データに応用した研究成果を国際的に発信していくことを計画している。
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Causes of Carryover |
本研究は海外の研究協力者との共同研究により推進することから、新型コロナ感染拡大前の計画では、研究メンバーが責任を持って研究遂行しつつ、研究会や国際学会参加の折りに本格的・集中的な議論を行う予定であった。しかし2020年度春以降は新型コロナ感染拡大により、当初予定していた研究会や海外出張および国際学会参加が不可能となった。そのため2020年度に計画していた海外の共同研究者との研究会のための海外出張を延期せざるを得ず、スカイプなどを使ったオンラインミーティング、サーバを用いた資料共有などを実施する形に替えざる得なかった。主として出張時に利用するための軽量ノートPCを購入予定であったが、今年度予定した全ての出張が不可能となったため年度内に執行されず、次年度使用額として残っている。打合せのための海外出張の旅費および国際学会参加のための旅費は年度内に執行されず次年度以降になったため、次年度使用額として残っている。 2020年度に計画していた海外の共同研究者との研究打ち合わせのための海外出張については実現可能となった段階でできるだけ早期に実施し、社会調査データに応用した研究成果を国際的に発信していくことを計画している。そのため、2021年度に数度の研究打合せ旅費を計上している。
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