2022 Fiscal Year Research-status Report
確率モデルを用いた社会調査データセットの欠損値への対処手法開発とその応用
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20K02171
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中井 美樹 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (00241282)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 縦断データ / 不完全データ / 主観的幸福感 / 隠れマルコフモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、過去数年間に進めてきた、欠損値を含む社会調査データ分析のための新しい手法をさらに拡張し、手法の改善とその有効性の検証を推進することにある。本プロジェクト最終年度と当初考えていた2022年度には、主に2つの課題、(1)欠測によるサンプルの偏りの補正手法を用いた推定方法の社会学データへの応用、(2)国際学会での成果の報告、を柱に研究に取り組み成果をあげた。第一の成果は具体的には、観測値が欠落した不完全なパネルデータを扱う場合の、データの欠測によって生じるバイアスの補正手法について従来提案されてきた対処方法について検討した。さらに、無作為抽出による標本からなる日本のパネル調査データに、欠測データを適切に考慮に入れた統計モデルを提案・応用し、分析結果の精度の向上を目指した。分析結果より、長期的な subjective well-being の変化に関する知見を得た。この研究はミラノビコッカ大学の研究協力者であるPennoni教授とともに共同研究により進めることで、社会学および統計学からのアプローチにより達成された。第二に、上記の知見を国際学会 ECDA2022(イタリア・ナポリ)において報告し、手法の応用へのコメントのみならず、得られた知見の社会学的な意義について多様なフィードバックを得ることができた。 本研究は海外の研究協力者との共同研究により推進することから、研究メンバーが責任を持って研究遂行しつつ、研究会や学会参加を通じて本格的・集中的な議論を行う予定であった。しかし、新型コロナ感染の影響により当初予定していた研究会や海外出張が実施できない時期もあり計画の変更を伴うものであった。とはいえオンライン会議などを併用しながら研究を遂行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナ感染拡大により当初予定していた研究会や海外出張が実施できない時期もあり計画の変更を伴うものであったが、今年度の目標としていた課題、とくに欠損データを含む縦断的社会調査データへの縦断的データ解析手法の応用について成果をあげた。無作為抽出に基づき日本社会で2003年~2018年の16年間14時点において実施された「くらしの好みと満足度についてのアンケート」の調査データを利用し、subjective well-being の経時的パターンの分類と変化の分析を進め、欠測データを適切に考慮に入れた隠れマルコフモデルを応用した研究より得られた知見を国際学会において発表を行うことができた。研究実績の概要にも示したように、ミラノビコッカ大学のPennoni教授とともに進めてきた研究はECDA2022(イタリア・ナポリ)において発表し、多様なフィードバックを得ることができた。このことは本研究の意義とその課題を示すとともに今後の研究を深化させることに繋がったと考える。 さらに、この研究成果は英語論文としてまとめつつあり、2023年度の刊行を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度には、2022年度までに進めてきた、直接観測されない変数(潜在変数)の時間的な移行過程の分析に引き続き取り組む。その際に、これまでは主としてランダムな欠損(MAR)を仮定した解析を行ってきたが、次年度はこれをランダムではない欠損の場合のバイアスの補正のためのモデルに拡張した応用研究を推進する予定である。 2023年度も上記の研究遂行は研究協力者との連携を通じて推進する。海外の研究協力者とは、日常的には電子メールなどオンラインによる情報の共有を図るとともに、スカイプなどを使ったオンラインミーティング、サーバを用いた資料共有を行い、加えて本格的な議論を展開するための研究会開催も予定している。
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Causes of Carryover |
本研究は海外の研究協力者との共同研究により推進することから、新型コロナ感染拡大前の計画では、研究メンバーが責任を持って研究遂行しつつ、研究会や国際学会参加の折りに本格的・集中的な議論を行う予定であった。しかし2020年度春以降長期間にわたり新型コロナ感染による移動制限が続いた。そのため、当初予定していた研究打ち合わせのための海外出張が不可能となり、予定されていた国際学会も延期となった。そのため2022年度に予定した打ち合わせのための海外出張の旅費および国際学会参加のための旅費は年度内に執行されず、次年度使用額として残っている。加えて、研究代表者は2022年度前期中に学外研究を得て米国に滞在できることとなり、出張が可能となった後に実施した研究会出張では、当初予定していた日本-欧州間の出張のための旅費を節約することにつながり、その結果、研究費を節約することができた。 2022年度に計画していた海外の共同研究者との研究打ち合わせのための海外出張については早期に実施する計画であり、そのための研究打ち合わせ・資料収集の旅費を計上している。
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