2021 Fiscal Year Research-status Report
盆踊りによるコミュニティ形成に関する地域社会学的研究
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20K02173
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
足立 重和 追手門学院大学, 社会学部, 教授 (80293736)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ポスト観光化の盆踊り / ポストコロナ社会 / フォーラム型の地域的つながり / 地域のニューカマー |
Outline of Annual Research Achievements |
地元住民志向の“ポスト観光化”の盆踊りは、その地域に魅力を感じて定住しようとするI・Uターン者に住みつづけるための安心を提供するものでなければならない。では、現代のニューカマーは、いったいどのような地域的つながりを心地よいと感じるのだろうか。2021年度は、現地での若干のインタビュー調査と他地域の事例研究から、上述した問いに応えようとした。その地域的つながりとは、「フォーラム型」と呼ばれるものである。 フォーラム型の地域的つながりとは、どのようなものなのか。たとえば子育てを例にとると、多くの地域に暮らす若い母親たちは、結婚・出産して見知らぬ地域に放り込まれ、“アウェイ”のなかで幼いわが子を育てなければならない。そのような母子はやがて地域の子育てサロンに行き着くのだが、まず母親がチェックするのは、そのサロンが「地域に開かれた場所」であるかどうかである。“地域に開かれた”というのは、入会や登録をもとめられることはなく、事前に出欠の連絡をしなくてもよく、そこに行けば必ず誰かがいて、様々な年代の人びとや、様々な子育ての考え方をもっている人びとに出会える場所のことをさしている。そのような場では、ときに語られる若い母親たちからの日頃の子育ての悩みにヒントを提供する。そうやって、様々な年代の人びとと人間関係ができていくことで、それまでアウェイだった母親たちは、ここで子育てするという実感をもち、やがて今までの恩返しのつもりでサロンのスタッフを志願するという。 ここでいえるのは、「特定の集団や組織のメンバーシップの確立」と「ここに住みつづけるという地域への愛着」は必ずしも重ならないという点である。むしろ、“地域に開かれた”子育てサロンのように、集団や組織のメンバーシップがあいまいで、参加するかしないかは自由といった人間関係のほうが、ニューカマーにとってはかえって地域への愛着をもちやすいのだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度も、前年度同様、新型コロナウイルス感染拡大によって、事例地である岐阜県郡上市八幡町にてフィールドワークをすることがほとんどできなかった。第5、6波の流行時は、ちょうど夏の盆踊りシーズンを直撃し、現地では数日間のみのオンライン開催となった。聞き取り調査にかんしても、フィールドである郡上八幡において新型コロナウイルス感染による初の死亡者が出て以降、大阪などの都市部の感染蔓延地域からの現地入りは、昨年よりさらに厳しい目が向けられるようになった。 ただ、2021年秋頃にいったん感染拡大が収まり、11月、12月、翌年3月には現地に入ってインタビュー調査が可能となり、近年微増しているIターン者による郡上おどりや地元自治組織への関わりについて聞き取ることができた。 しかしながら、本研究全体として中心となるフィールドワークが立ち遅れているのに変わりはない。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度も新型コロナ禍が続くことを前提に、2021年度から準備していた、感染対策を徹底した独自のガイドラインを提示し、それに同意いただいた方々からインタビュー調査を本格化していく予定である。ただ、新型コロナ禍も3年目に入り、現在ウィズコロナ社会といった状況を迎えており、感染対策を万全にすれば、インタビュー調査に協力的な地元住民が増えたように思う。今後の研究の推進方策としては、現地で長年付き合いのある地元住民と頻繁に連絡を取りながら、感染状況を見極めつつ、フィールドワークに注力していく予定である。
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Causes of Carryover |
2021年度は、新型コロナウィルス感染拡大により、フィールドである岐阜県郡上市八幡町での現地調査ができなかったため、その分が次年度使用額として生じた。2022年度は、翌年度分として請求した助成金と合わせて、感染対策を徹底したガイドラインを設けたうえで、現地調査を再開すべく、その交通費および滞在費で使用する。また、2020年度から継続してきた理論研究を、2022年度もさらに発展させるため、地域社会学、民俗学、文化人類学の専門書の図書費に充てる。
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Research Products
(3 results)
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[Book] Community sustainability and resilience: Life-environmentalist perspective2022
Author(s)
Daisaku YAMAMOTO, Hiroyuki TORIGOE, Takehito NODA, Yusuke HIRAI, Shusuke MURATA, Rie MATSUI, Shigekazu ADACHI, Kyoko UEDA, Atsushi YAMAMURO, Hiroyuki KANEKO, Meifang YAN, Kiyoshi KANEBESHI, Tomonori ISHIOKA, Kazunori MATSUMURA, Masaharu MATSUMURA, Yumiko YAMAMOTO, Motoji MATSUDA
Total Pages
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Publisher
Routledge
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