2021 Fiscal Year Research-status Report
〈音の風景〉を手がかりとした〈記憶の政治〉の解明に関する環境社会学的研究
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20K02174
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
大門 信也 関西大学, 社会学部, 准教授 (00559742)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | サウンドスケープ / 風景 / 記憶 / 災害 / 遠州灘 / 前浜 / 海鳴り / 波小僧 |
Outline of Annual Research Achievements |
21年度は、現地研究協力者の尽力により、7月から10月にかけてほぼ毎日の聴取記録と録音記録が実現した。また、同じく現地研究協力者への聞き取り調査、現地での資料収集などを実施し、これまでの中間的な成果を複数、報告・発表することができた。 録音・聴取調査においては、天候の変動による波浪や風等の変化により、波音がどのように変化するかについての詳細なデータを得た。とりわけ、海鳴りと呼ばれる現象の音響特性の一端を明らかにすることができた。加えてこうした波音が、他の騒音源に埋もれ、日常生活において感じにくくなっている等、現代的な変化についての洞察も得られた。長距離伝播の状況についても理解が進み、伝承が伝える遠州地域の波音の特徴の一端を把握できた。 また、聞き取り調査や資料収集により、おもに沿岸部における現代的な地域生活の変容や、海との関わりの変化について、地域住民のライフヒストリーに即した理解を深めることができた。録音を含む一連の調査から、海鳴り/波小僧伝承について、農業における(とくに台風による)塩害との関係の重要性に気づくことができたのは、災害との観点から大きな成果である。 これらの成果をふまえ、学会報告や研究論文の発表を行った。学会報告においては、これまでの調査研究プロセスから現地研究協力者による調査実践をふりかえりつつ、当事者に対する聞き取り調査をふまえた、市民調査の可能性に関する研究報告を行った。また研究論文においては、地域社会における「風景の解読力」を理解し「風景を語り継ぐ道」をいかに構想するかという問いのもと、海鳴り/波音伝承、地域社会の変容、そして波音市民調査を横断的に分析しつつ、サウンドスケープ研究における「基調音」の重要性等の指摘を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年目となる21年度は、初年度よりも多く夏場、冬場と、それぞれ数回の現地調査を実施できたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響が続くなか、計画段階で想定していたよりも短い日数にとどまった。初年度の遅れもあり、2年間で予定していた進捗状況にまではカバーできていないと判断した。ただし、地元協力者の多大な尽力によって、膨大な波音に関する録音、聴取記録を得ることができ、22年度にむけての大きな成果を得られたため、22年度以降の改善を見込んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の調査課題として、夏場の台風が多発する時期の録音や聴取記録の更新がある。21年度の成果をふまえ、より高音質な録音機材を導入し、より効果的な調査体制を整える。引き続き現地研究協力者との協働によりこれを行う。 また、内陸部への調査を実施し、伝承が伝える地域での生活のあり様が、どのように継承されまた断絶しているのかについての理解を深めつつ、沿岸部同様、協働体制を構築していく。 さらに、沿岸部・内陸部の別をこえて、ひろく地域住民からの情報を得つつ、災害を含めた遠州地域における地域生活と環境との関係についての関心を「波音の風景」を手がかりに高めていくような、実践性をともなう調査手法を検討し、これを実施していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で、初年度の現地調査をほぼ行うことができなかった。21年度においては、現地調査が一定程度実施できたものの、同様の理由から当初計画よりも小規模にとどまった。2年間をつうじて当初計画通りの支出ができず、次年度使用額が生じることとなった。今後は、現地調査を順次実施し、これまでの遅れをカバーすることに加え、現地での研究協力をさらに積極的に得ながら、予算をそれに必要な物品購入費や委託費等にふりわけ、当初計画の実現を目指す。
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Research Products
(2 results)