2020 Fiscal Year Research-status Report
Conditions of movements towards anti-exclusionism under biculturalism, multiculturalism and neoliberalism
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20K02175
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Research Institution | Osaka International University |
Principal Investigator |
中村 浩子 大阪国際大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00441113)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 反排外主義 / 二文化主義 / 多文化主義 / 新自由主義 / テロ / ニュージーランド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ニュージーランドにおける排外主義克服に向けた諸実践を把握し、同国社会及び諸制度における二文化主義、多文化主義、新自由主義との関係を明らかにし、反排外主義が持続する条件を解明することを目的としている。初年度である2020年度は、主に以下の3つの作業を行った。 第一に、モスク銃乱射テロ事件で殺人罪などで起訴された被告の裁判において2020年8月に仮釈放なしの終身刑が言い渡されるまでの動きをめぐり、被害者、遺族、国内イスラム教徒団体、政府及び首相、国家、メディア、国民はどのように被告及び裁判に向き合い、どのように正義を実現させようとしたかについて、主としてニュージーランド国内主要メディア4社による報道及び特集記事等から把握するとともに、メディア報道の比較分析を進めた。 第二に、2020年度末に公表された、事件をめぐる王立委員会調査報告書及び諸発表文書について、政府機関の事件に至るまでの対応と未然防止のための責任はどのように検証されたのか、またその調査過程及び報告書公表をめぐり主として被害者側にどのような配慮が払われたかについて考察を行った。 第三に、新型コロナウイルス感染症の流行という予期せぬ事態を受け、排外主義を許容しない政治的リーダーシップのあり方について考察するための事例として、厳しい行動規制を早期に実施した対策が国際的に一定の評価を得た同国政府の対応と首相による国民向けメッセージ発信の内容と方法、そして国民の反応について把握するための作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年8月の判決公判をめぐるメディア報道について分析を進めると同時に、排外主義の克服に向けて多様なニュージーランド国民から幅広く納得を得る正義の方向性が模索された成果とも言える、王立委員会調査報告書の内容と扱いについて分析を進めることができた。 また新型コロナウイルス流行により現地調査が困難になったものの、同国政府及び首相が進めた感染症対策とそれに伴う諸実践は、排外主義克服にも通じる包摂的取り組みとして本研究で扱うべき予期せぬ格好の分析対象と考えられるため、その作業を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、判決公判をめぐる報道、王立委員会報告書、新型コロナウイルス対策について初年度に実行した3つの分析作業の成果を順にまとめ、発表を行っていく。それら成果をまとめる中では、ニュージーランドの二文化主義、多文化主義と反排外主義の方向性が明らかになってくるものと思われる。 また加えて、ニュージーランド国内で反排外主義の運動を展開している市民団体や宗教団体と、それら諸団体に参加している個人に聞き取り調査を依頼し、実施していく予定である。その上で、排外主義を克服しようとする運動に誰がどのようになぜ参加するのか、分析を行っていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症流行のため、海外調査の実施が困難となったため。 海外調査の実施が可能となり次第、計画通り行う予定であり、その際に旅費を使用する。
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