2022 Fiscal Year Research-status Report
Conditions of movements towards anti-exclusionism under biculturalism, multiculturalism and neoliberalism
Project/Area Number |
20K02175
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Research Institution | Osaka International University |
Principal Investigator |
中村 浩子 大阪国際大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00441113)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 反排外主義 / モスク銃乱射事件 / ニュージーランド / 多文化主義 / 白人至上主義 / 高校生 / ポピュリズム / 学校理事会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、排外主義の顕著な事例である2019年3月15日モスク銃乱射テロ事件が発生したニュージーランドにおいて、その後反排外主義の取り組みや運動がいかなる背景や条件のもとに展開・持続しているかを考察することを目的としている。 2022年度は新型コロナウイルス流行による入国制限が緩和・撤廃されたため、2度に及ぶ調査の実施が可能となった。 2022年8月には、モスク銃乱射テロ事件が発生したクライストチャーチにおいて、白人至上主義者として知られる男が公立学校の理事会選挙に立候補したことが大々的に報道されたことを受け、民主的選挙を通じた排外主義による学校教育支配というリスクに対していかなる対応策が可能か、排外主義は実際に学校現場にいかなる影響を及ぼし、排外主義に抗う動きはいかなるものが見られるか考察することを目的に翌9月に現地調査を実施した。現地では、学校関係者、教育省、報道関係者、理事会選挙運営システム会社等、またテロ事件による被害者遺族に聞き取り調査への協力を得ることができた。また調査をもとに、クライストチャーチにおいてテロ事件後に反排外主義の機運が高まった背景についても考察を行った。 また2023年2月には、移民の生徒が多く在籍し、超多様多文化(superdiverse multicultural)とされるオークランドの高校において生徒主導の多文化啓発キャンペーンが展開されたことを受け、高校生たちは排外主義をどのように捉え、どのような脅威を感じつつ、どう対峙しようとしているのか、反排外主義をどのように推進できると考えているのか明らかにすべく、現地調査を実施した。同高校では教師及び在籍する生徒28名にインタビュー調査への協力を得ることができた。またイスラム教徒の生徒たちが抱きうる葛藤をいかに乗り越え、学校コミュニティの構築に貢献しようとしているかについても、論文発表に向け考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニュージーランドにおける入国制限緩和及び撤廃を受け、2022年度は2度に及ぶ現地調査を実施することができた。そのため本研究における当初の目的達成に向けて、2022年度としては想定を上回る研究の進捗を見ることができた。 具体的には、2022年8月に白人至上主義者による学校理事会選挙出馬という事例の発生を受け、政府関係者や市議、学校関係者や遺族への聞き取り調査に当初計画した以上の協力を得ることができた。また2022年2月、ある高校でイスラム教徒の女子生徒に対する他生徒からのハラスメント行為が大々的に報道されたことを受けて展開された、ある(別の)高校における生徒主導の多文化啓発キャンペーンについても調査協力を得られたため、当初予定していた以上の規模及び深さでインタビュー調査を行い、研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、本研究における当初の目的及び実施計画に沿った成果を得るべく、8月に現地調査を再度補完的に実施する予定である。その上で調査結果について分析作業を完了させ、反排外主義の取り組み及び運動はどのような背景及び条件のもとに展開され、また持続が可能かについてまとめ、成果を公表する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行により、現地調査の実施が不可能である期間があったため、研究計画を見直し補助事業期間を延長した。こうした事情に伴い、2023年度使用額が発生している。
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