2021 Fiscal Year Research-status Report
高齢者の防災対策を促進する要因に関する研究―コホート調査による地域レベルでの検討
Project/Area Number |
20K02176
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Research Institution | National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention |
Principal Investigator |
大塚 理加 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 災害過程研究部門, 特別技術員 (50531729)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮國 康弘 日本福祉大学, 社会福祉学部, 講師 (90734195)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高齢者 / 地域防災 / 地域づくり |
Outline of Annual Research Achievements |
地域高齢者の災害による被害を防ぐためには、地域高齢者の防災対策の自助、共助の促進が重要であると考えられる。本研究では、防災対策の自助、共助を促進するために効果的な地域の要因を明らかにすることを目的としている。 2021年度は、飯田市のサロン活動への登録時に、避難訓練参加状況と健康状態、生活状況について、質問紙調査を行った結果について分析を進めた。自立高齢者の中でも、日常での活動がやや低下してきた高齢者(サロン参加者)について、避難訓練参加に関連する要因を分析した。その結果、サロン参加者の中でも、口腔機能の低下が見られるプレフレイルの高齢者や、認知機能が低下してきた高齢者が避難訓練に参加しなくなることが示された。この結果は、飯田市の学術雑誌(査読有)の『学輪』に掲載された。 また、地域在住の要介護認定を受けていない自立高齢者を対象としたJAGES2019調査データの分析を進めた。この調査は、2019年度に自記式にて郵送調査を行ったもので、分析対象は24353名(64市町村)であった(回収率53%)。先行研究で災害準備との関連が報告された項目に生活の状況を加え、性別、年齢、経済状況、主観的健康感、学歴、居住状況、独居、主介護者を独立変数とした。従属変数は、各災害準備の項目(水・食料の備蓄、家具等の固定、地震保険等の加入、避難場所と経路の把握、災害時の話合い、防災の会への参加)とし、ロジスティック回帰分析を行った。その結果、年齢や日常生活機能が災害準備との関連が認められた。また、女性の防災対策は家庭内にとどまり、地域防災への関わりは男性が高いこと等も示された。これらの結果は、2021年度の日本老年社会科学会、筑波会議、IDRiM2021 Conferenceで発表した。また、現在、本研究の結果について論文を投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は最終年度であるが、コロナ禍が長引くことにより、飯田市での介入研究の実施が困難となったため、研究計画を見直した。本研究では、ソーシャル・キャピタルと防災対策の縦断的検討と地域における共助の促進の効果検証を実施する予定であった。ソーシャル・キャピタルと防災対策の縦断的検討は順調に実施されており、縦断データの分析用データベースを作成し、マルチレベルで分析を進める。また、また、2022年度実施されるJAGES調査に新たな災害準備に関連する項目を追加する準備も進めている。ただ、地域のおける共助推進の効果検証については、昨年度までの訪問が不可能な時期の長期化により、介入実施が困難となった。そのため、今年度は、調査分析の結果を踏まえ、要配慮者の防災対策に関わる関係者へのインタビュー調査を実施し、現場での課題を検証することとした。 以上の通り、コロナ禍で研究計画を見直すことを余儀なくされたが、現時点では順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、本研究の目的である地域レベルのソーシャル・キャピタルと災害準備の関連を検証する。縦断データのデータベース作成を行い、マルチレベル分析を行う。さらに、コロナ禍により地域介入ができなかったことから、これまでの調査分析の結果を考慮し、要配慮者の防災対策に関わる関係者等へのインタビュー調査を行い、現場での課題を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍において、研究計画が変更となった。今年度のデータベース作成および、調査実施について研究費を使うため、昨年度の研究費を繰越した。
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Research Products
(4 results)