2020 Fiscal Year Research-status Report
公営住宅団地の入居者と周辺住民の共生に向けた地域支援に関する研究
Project/Area Number |
20K02183
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
川村 岳人 大分大学, 福祉健康科学部, 准教授 (30460405)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 公営住宅 / 社会的排除 / 社会的包摂 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,公営住宅団地の入居者と周辺住民の共生に向けた地域支援のあり方を検討することである。 令和2年度は,関連する文献を収集し,社会的排除の空間的側面やコミュニティに関する国内外の先行研究の到達点を整理した。前者については,主に欧州の社会的排除に関する先行研究を整理し,社会的排除の「地域効果」によって住民の社会的孤立が促進されることや,スティグマを負わされた地域のイメージを刷新するには,居住環境の改善だけでは不十分であり,外部の人びとがその地域の肯定的な面を直接的もしくは間接的に知るための方策を講じる必要があることなどを確認した。 また,後者について,主に日本の社会学のコミュニティ論に関する先行研究を整理し,かつてコミュニティは定住を前提とした「地域性」や同質性に根ざした「共同性」が構成要件とされてきたものの,最近はこうした枠組みでは十分に捉えられないコミュニティの実態が立ちあらわれており,「新たなコミュニティ」の理論化を試みる論考が蓄積されつつあることを確認した。そこでは,コミュニティは「隣り合うこと」に根ざしながらも外に開かれており(開放性),異なるものが繰り広げる相互作用のなかから(異質性),必要に応じて支え合うような活動が偶発的に立ちあらわれるような(創発性)人びとのゆるやかなつながりとして理解されている。 以上のことから,本研究が対象とする公営住宅団地があたかも周囲から切り離されているかのような一つの囲われた区画となりやすく,ときにスティグマを負わされる場合すらあることを踏まえ,入居者のみならず多様な人びとが関わり,その関係性を基盤として自発的なケアが創発されるようなコミュニティをつくり出す地域支援の条件を検討することを本研究の具体的な課題として設定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に予定していた研究計画通りに研究を遂行することができたものの,アンケート調査およびインタビュー調査の実施に向けた実務的な調整については,新型コロナウイルス感染症の影響でわずかに遅れが生じている。これについては,感染症に関する動向も踏まえながら,必要に応じてオンラインでの打ち合わせに切り替えるなどの代替措置を講じることを検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
入居者の周辺住民に対する意識を規定する要因を析出することを目的に,大規模な公営住宅団地に入居する全世帯を対象にアンケート調査を実施することを予定している。調査対象地は,本研究の目的を踏まえ,1,000戸以上の公営住宅団地であること,周囲から隔絶した空間を形成していることを基本的な条件とする。 アンケート調査と並行して,公営住宅団地の入居者と周辺住民の相互理解が進展する過程を構造的に明らかにすることを目的として,インタビュー調査を行う。具体的には,両者の交流を生み出している複数事例に焦点を当て,1事例ごとに10名(公営住宅団地の入居者5名,周辺地域の住民5名),計20名に対し,参加によってもたらされた人間関係やその影響等を尋ねることを予定している。
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Causes of Carryover |
当該年度に研究協力者との打ち合わせを予定していたが,新型コロナウイルス感染症の影響で実施できなかったため,未使用額が生じた。 次年度はこの打ち合わせを行うこととし,未使用額はその経費に充てることを予定している。
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