2023 Fiscal Year Annual Research Report
公営住宅団地の入居者と周辺住民の共生に向けた地域支援に関する研究
Project/Area Number |
20K02183
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
川村 岳人 立教大学, コミュニティ福祉学部, 准教授 (30460405)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 公営住宅 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,公営住宅団地が周辺地域から孤立した空間を形成しやすいという実態を踏まえ,公営住宅団地の入居者と周辺住民の共生に向けた地域福祉実践のあり方を検討することである。 先行研究によると,公営住宅団地を拠点として入居者と周辺住民の交流を促す小地域福祉活動を組織化するには,入居者が周辺住民を受け入れる意識を持つことが基礎的な条件になる。一方,先行研究は,公営住宅団地でコミュニティを組織化する方法として,「団地自治会」の活動を自明の前提としてきたが,団地自治会の活動は団地内で完結するものが多いため,周辺住民との交流にはつながりにくい面があると考えられる。 以上のことを踏まえ,令和5年度は,どのような要因が入居者の周辺住民に対する意識を規定するのかを析出するため,団地自治会の先駆的な取り組みで知られる団地において,全世帯を対象にアンケート調査を実施した。周辺住民に対する意識を従属変数とする重回帰分析を行った結果,他の変数の影響を取り除いても,家族の介護,子育て,趣味のサークルといった個人的な経験を持つ人ほど,周辺住民を好意的に捉えていることが明らかになった。一方,団地自治会の役員を務めた経験による影響は認められなかった。これらの結果は,団地自治会の活性化のみを重視する従来のアプローチのみで入居者と周辺住民の相互理解を促進することは困難であること,属性の違いを超えて固有性をもった個人として関わりを持つことをつくり出す地域福祉実践を展開していく必要性を提起していると考えられる。 本研究の意義は,入居者の周辺住民に対する意識を規定する要因を実証的に明らかにした上で,それに基づいて公営住宅団地で求められる地域福祉実践のありようを論じた点である。本研究で得られた知見は,今後,福祉専門職が公営住宅団地で地域福祉実践を行う際,支援の対象やプログラムの内容を決定するための一つの指針になり得る。
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