2021 Fiscal Year Research-status Report
重症児者および重度認知症者に対する振動刺激を用いた日中活動支援の効果の検討
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20K02188
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
矢島 卓郎 目白大学, 人間学部, 客員研究員 (60438885)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 流理也 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (40750120)
雪吹 誠 目白大学, 人間学部, 准教授 (70438886)
荏原 順子 目白大学, 人間学部, 教授 (80342054)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 重症心身障害児者 / 医療型障害児入所施設 / 療育 / 音楽活動 / 体感音響装置 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】今年度は、全国の医療型障害児入所施設のより障害程度が重篤な重症児者に対する音楽を活用した療育の実情を明らかにする目的で、療育担当者を対象とした調査を実施した。 【方法】対象者:全国の公法人立医療型障害児入所施設135箇所の療育担当者、倫理的配慮:目白大学人文社会科学系研究倫理審査委員会の承認、調査:郵送法で実施。 【結果・考察】① 対象:医療型障害児入所施設で重症児者の療育施設20施設、その療育担当職員38名が回答。主な職域は保育士、生活支援員、音楽療法士など。利用者の分布は大島分類Ⅰが68.6%。② 音楽を活用した療育活動は重篤な重症児者の障害特性に応じて他の療育活動と一緒に実施、一方、音楽のみの療育活動も設定。障害特性は主に日常生活場面の観察や記録で理解。療育活動では活動時間、表情、音の大きさなどに配慮する一方、支援や専門スタッフの配置、活動効果が不明、表情の読み取り、記録をまとめる時間で困っていた。活動は病棟のグループごとや病棟ごとに実施し、その時間は16~45分が約70%で、平均10名の利用者を保育士、介護福祉士、看護師など平均2名が担当していた。③ 音楽を活用した療育は、個別ではステレオなどで音楽を聴く、楽器で活動する、集団は楽器で活動、スヌーズレンで音楽を聴くと異なっていた。その目的は、個別は楽しみ、緊張をとる、集団が楽しみ、緊張をとると生活の質の向上で、障害特性を考慮していた。活用される楽曲は、個別が古典的およびポップス調の童謡、集団はポップス調の童謡と歌謡曲であった。④ 現状は、コロナ禍の中で、人手が足りずに十分に関わることができない反面、個別でこれまでよりも丁寧に関われた側面も認められた。職員は療育・音楽の本、同僚から意見を療育の参考にしており、各施設間で療育に関わる情報の共有を求めていた。また、体感音響装置を活用した療育に約80%が関心を示していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、医療型障害児入所施設で生活する超重症児者を含む重篤な重症児者に対して小集団式体感音響装置を活用して音楽に駆動された振動により、重症児者の緊張の緩和と生活の質を高める臨床的検討をおこない、その効果を心拍、皮膚温、バイタルサインの客観的指標に確認する取り組みをする予定であった。このことは、人手不足に苦慮する重症児施設における療育の一方法につながるものであり、重症児者と同様に寝たきり状態の高齢者施設入所している認知症高齢者にも適用を目指すことを目的としていた。そのため、今年度は、①健常大学生に童謡の認知度を確認した後、大学生を最大4名に分け、まず計算課題などのストレス場面を設定し、その後に集団式体感音響装置を活用して好みの童謡で駆動した振動を腰に呈示することでリラックス効果が生起するか確認する、②全国の医療型障害児入所施設の療育活動の実態をアンケート調査する、③研究協力施設の重症者4名に集団式体感音響装置を活用して「音薬」により振動を呈示する実践的取り組みを6ヵ月継続的に実施してリラックス効果を心拍変動、顔の皮膚温の変化、および取り組み開始前後に病棟職員に対象者の身体イメージなどの評価を指標に取り組みの効果を確認することを予定していた。しかし、一昨年末から新型コロナの感染が拡大し、なかなか終息をみないため、①大学及び③研究協力施設での研究が実施できなかった。ただ、②全国の医療型障害児入所施設の音楽を用いた療育の実態調査は実施することができた。 今年度もコロナ感染拡大の終息が見通せないなか、①大学生を対象とした童謡の調査とその結果から得られた童謡を活用して体感音響装置を用いた振動刺激への反応性の検討、④認知症高齢者施設における音楽を活用した取り組みの実態調査は実施する予定でいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究は、今年度に実施できなかった研究を進めたいと考えているが、研究の遂行は、新型コロナ感染の終息状況によると考えている。新型コロナの感染の終息しないなかでも実施可能な研究、終息後に実施できるよう準備に関わる研究は進めていきたい。具体的には、昨年度実施できなかった①大学生を対象に幼児期から聞いてきた、歌ってきた童謡・唱歌をアンケート調査し、共通する特徴の抽出、抽出された童謡を最大4名に同時に体感音響装置で振動を呈示してその反応性を心拍、サーモグラフィ、唾液アミラーゼで検討する。音楽提示前に、簡単に計算などを負荷して心理的ストレスを設定した後に振動を伴う音楽の提示をおこなう。また、④認知症高齢者の施設において重度の認知症高齢者に対してどのような取り組みをおこなっているか、アンケート調査と聞き取り調査をおこない、実情を明らかにする。なお、2021年度はリモートで打ち合わせ会議を実施したが、2022年度は対面による研究会議も実施して連携や調整をおこなうことにしている。
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Causes of Carryover |
今年度は新型コロナ感染拡大のため、医療型障害児入所施設および大学における実践研究や実験的研究をおこなうことができなかったが、全国の医療型障害児入所施設へのアンケート調査は実施したので、委託費など科研費を活用した。今年度も新型コロナが終息しそうにないなか、①および④は実施を予定しており、そのため、研究に必要とした機器類などは状況を確認して購入を予定している。
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